今日は、Web会議におけるビデオ(画面)オン、およびオフについて考える。つまり顔を見せるか見せないか、だ。
<エピソード①>
以前、通訳者の紹介で、ある大学の「特別講義」みたいなのを担当することになった。学生たちに対し、私自身のこれまでのキャリアについて話し、彼らのキャリア構築の参考にさせてほしい、みたいな趣旨。そういうのが大好きな私は二つ返事で引き受けた。
当時コロナ真っ盛りだったこともあり、Zoomを利用した講義となった。学生たちはみな画面オフで、オンにしているのは私と担当教授の2人だけだった。
ほぼ真っ暗な画面に向かって熱く人生を語っていると、まるで壁に向かって話しているような沈鬱な気持ちになった。相手は向こうにいるのかいないのか。聴いているのかいないのか。いるとしたらどんな顔をして聴いているのか、うなずいているのか、冗談のパートで笑ってくれているのか、何も分からない。
講義終了後、担当教授に「しっかしアレですねw、みんな画面オフだとなんだかやりにくいというか、、、(笑)」みたいに振ったら「もうあきらめてます(笑)」という答えがスパーンと返ってきて、今どきの学生はそういうものなのかな。。?と思った。
<エピソード②>
当社が通訳を担当させてもらっているある会社で、社長の発案で、社内の各部門とのディスカッション・セッションを設けている会社がある。
順繰りにいろんな部の人たちと開催。規模が大きい部は2回・3回に分ける根の入れよう。社長は同じような話を何度も繰り返さないといけないから大変だが、それぐらい、社員とのコミュニケーションを重視しているということだろう。
さてそのセッション、Web会議形式で行われるのだが、部門によって画面オン率が異なる。ほぼ全員オンの部門もあれば、ほぼ全員オフの部門も。
画面オフの部門に対し、社長が「これは礼儀の問題でもある。不可能な場合はしょうがないが、そうでなければなるべく画面をオンにするように」と呼びかけても、画面は頑なにオフのままのことが多い。
それを通訳しながら(なんと無礼な人たちか・・・)と憤慨していたのだが、実はこれ、その人が無礼とかそういう問題ではなく、もっと根が深いのかもしれない、と思った。
<ここからが本題>
なんで画面オフなの?
人と会う時、顔の前に紙をぶら下げ、顔を隠して「おう、ひさしぶり!」ってやらないですよね。顔を見せますよね。それと同じでしょ、なんで顔を見せないの?っていう話です。
画面(ビデオ)をオンにし、顔出しで一生懸命しゃべっている側からすると、画面オフにして暗闇の中に潜んで話を聴いている人を無礼に思うことがあるのもやむを得ない。
では、Web会議で画面をオフにする人は、なぜオフにしているのか。考えられる理由は以下の通り:
1.通訳者とか議事取りとか、そういう事務局的な立場である → それは分かるので、とりあえず除く。ここでは会議の主参加者たちのことを取り上げる。
2.着替え中とか移動中とか、何かやむを得ない事情がある → それならまあしょうがないけど、でも一応勤務中ですよ、、、? と言いたいケースも。
3.自分ごときが画面をオンにするほどでもない、という謙遜。控えめな態度の表れ → これはむしろ「無礼」の逆ですよね。上記1.とも重複しますね。
4.その会議が双方向のやり取りではなく、自分は一方的に情報を受け取る/聴くだけの会議だと位置付けている場合
4.のケースが結構多いのではないか。つまり、「この会議は双方向ではなく一方通行。自分は話を聴くだけ」と思っているのだ。だから画面をオフにしている、そういうケースが多いんだろう。これが「この会議は双方向のやり取りになる」という意識が強ければ画面をオンにするかもしれない。つまり、個人の無礼/無礼ではないという問題ではなく、その人にとって、その会議がどういう位置付けか、という問題なのだ。
すなわち問題は、個人の姿勢云々ではなく、話を聞くだけの一方的な会議が多すぎること、それこそが本質的な問題なのではないか。
画面をオフにしている人たちは、無礼な悪い人ではなく、むしろ彼らこそが犠牲者なのだ。今まで、聞くだけの会議にさんざん出席させられてきた結果画面をオフにするようになっただけなのだ。
これは中東で、ブルカなどの布で顔を含め全身を覆わされている女性と似ている。彼女らは「喜んで」「自ら進んで」そうしているかもしれないが、実は彼女らは古い思想の犠牲者なのだ。それを解決するには、マインドセットから変えていく必要がある。
画面をオンにしろ!と強制し、無理やり画面をオンにさせてもしょうがない。それでは「謝れ!」と言って謝らせているのと一緒で、文字通り意味が無い。
解決策は、一方通行な会議をなるべく減らし、双方向の会議中心にしていくこと。
(この会議では自分も意見を表明出来る)、(自分も立派な参加者なんだ)と、みんなが主体的に参加出来る会議を主にすることで、みな自然と画面をオンにするようになると思う。報告や情報伝達だけの会議はメールやボイスメールでやればいいのだ。