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モンティ・ホール問題

モンティ・ホール問題って知ってますか?
とっても不思議かつおもしろいパズル?クイズ?なんですよね。我々の直感がアテにならないことが分かる問題です。

モンティ・ホール問題については、外国でも日本でも、既にいろんな方がブログや動画等で説明をしています。なので私があえて紹介し直す必要は無いのですが、我々通訳者の仕事は「モノを説明する」ことであり、その訓練の一環でモンティ・ホール問題を自分なりに説明してみます。この問題をまだご存じない方、ぜひ一緒に考えてみてください。

クイズショーで、司会者とクイズ参加者がいます。
3つのドアを使ったゲームを行います。

ルールは以下の通り:
・3つの閉ざされたドアのうち、1つが「正解」というか当たりで、そのドアを開けるとそこには新品のクルマがあり、それを当てたクイズ参加者はそのクルマをもらえます。一方、あとの2つのドアは「ハズレ」で、その向こうにはヤギがいます(外れた場合、クイズ参加者はそのヤギを連れて帰れるのかどうかが気になります。)
・クイズ参加者は、どのドアが当たりなのか知りません。
・司会者は、どのドアが当たりなのかを知っています。



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さて、クイズ参加者が、閉ざされた3つのドアのうち、1つを選択しました。仮にドア①を選んだとしましょう。
すると、ドア①は閉じたままの状態で、司会者が、残りの2つのドアのうち1つ(仮にドア②としましょう)を開けました。ドア②の向こうにはヤギがいました。つまりハズレです。
クイズ参加者が選んだドア①と、残るドア③は閉ざされたままです。
その状態で、司会者が「この後、残る二つのドアを開け、当たりを発表しますが、もし今からドア③に変えたければ、変えてもいいですよ?どうしますか?」とクイズ参加者に聞いたとします。
その場合、クイズ参加者は:
A. ドア③に変えるべきか、あるいは
B. ドア①のままで行くべきか、あるいは
C. どちらでも同じ(ドア①もドア③もどちらも当たりの確率は五分五分なのだから、選択を変えても変えなくても同じ)か、
というのがモンティ・ホール問題です。

僕を含め、多くの人はC.、すなわちそのままドア①で行こうが、ドア③に変えようが、関係ないと考えます。
でも、実はA.の「ドアを変える」べきなんだそうです。

え、なんで???って思いますよね。
だって、ドア①とドア③、どちらが当たりかは五分五分じゃないか、って思いますよね。
確かに、クイズを始める時は、ドア①が正解である確率は3分の1だった。でも、その後司会者がドア②を開け、それがハズレであることが分かった今、状況は変わった。今、ドア①とドア③しか残っておらず、そのどちらかが当たりでもう一方がハズレなんだから、確率はそれぞれ50%ではないか(だから選ぶドアを変えても変えなくても一緒ではないか)、というのが人間の直感というか、普通の考え方です。

この問題を考えるにあたり、おもしろい思考実験が「ドアの数がものすごく多かったらどうか」ということ。
例えばドアが100個、、、いや、1億個あったとします。その状態で、同じゲームをするとどうでしょうか。
クイズ参加者があるドア(仮にドア①としましょう)を選びます。ドアは全部で1億個あるので、クイズ参加者が選んだドア①が当たりである確率は1億分の1です。ゼロではありませんが、限りなく小さい/低い確率です。
さて、司会者がドア②から順に、ハズレのドアをどんどん開けていきます。そして、クイズ参加者が選んだドア①と、もう一つ、あるドア(ドアXとしましょう)だけを残し、それ以外の9999,9998個のドアをすべて開け、それらがすべてハズレだったとしましょう。
さて、クイズ参加者は、このままドア①で行くべきか、あるいは司会者が残したドアXに切り換えるべきでしょうか。

ドアが1億個の場合でも、「残るドアは2つで、そのどちらかが当たりなんだから、可能性は五分五分だ。だからドアを変えても変えなくても同じだ」という考え方をする人もいるかもしれません。
でも、ドアの数が1億個とものすごく多い場合、残されたドアXがものすごく気になりますよね(笑)。ドア①が正解である確率は、ゲームを始める時点では1億分の1。つまり、ほぼ間違いなくハズレだったわけです。で、どのドアが当たりかを知っている司会者が、残りのドアを片っ端から開けていき、そこで残されたのがドアXだったわけで、そう考えるとドアXが当たりである確率はものすごく高い、と思えます。
つまり、ドアの数がとても多いと、変えた方がいい気がするというか、変えた方がいいことが分かります。



さて、本題の、3ドアのゲームに話を戻します。
なぜ選んだドアを変えた方がいいんでしょうか。なぜ五分五分ではないのか。

これは確率の話なので、シナリオ毎に考えていきましょう。
ゲームを始める際、ドアは①、②、③と3つあり、その内のどれかが当たりであり、その確率は3分の1ずつです。

シナリオ1.  クイズ参加者が選んだドア①が当たりの場合(確率3分の1)
この場合、ドア②とドア③はともにハズレです。司会者はそれを知っています。
司会者はドア②か③、どちらかのドアを開けるわけですが、どちらもハズレなので、どちらを開けても同じです。この場合、司会者はランダムにドア②か③を開け、それがハズレであることが分かります。そして、もう一つのドア(こちらもハズレ)は閉じられたままの状態で残ります。
この場合、クイズ参加者はドア①のまま強行すべきですよね、ドア①は当たりなので。
なので、この場合は「ドアを変えるべきではない」ということになります。

シナリオ2. ドア②が当たりの場合(確率3分の1)
クイズ参加者はドア①を選びましたが、実はドア①は残念ながらハズレで、ドア②が当たりの場合はどうなるでしょうか。
この場合、司会者はドア③を開けます(司会者はいつもハズレのドアを開けるので)。
残るはドア①と②で、②が当たりですから、クイズ参加者は「ドアを変えた方がいい」ということになります。

シナリオ3.ドア③が当たりの場合(確率3分の1)
この場合、考え方は上記2.と同じです。
クイズ参加者はドア①を選びましたが、ドア①はハズレで、ドア③が当たりです。
司会者はドア②(ハズレ)を開けます。
残るはドア①と③で、③が当たりですから、クイズ参加者は「ドアを変えた方がいい」ということになります。

つまり、考えられるシナリオ1.2.3.それぞれが発生する確率は3分の1ずつで、シナリオ1.の場合は「ドアを変えない方がいい」ものの、シナリオ2.と3.においてはどちらも「ドアを変えた方がいい」わけで、そうすると3分の2の確率でドアを変えた方がいい、ということになります。

ここまで言われても、なんだかしっくりこない方もいると思います。
いやいやいや、ドア①ともう一つの閉ざされたドア、どちらも50%の確率ではないか、という気がしますよね。

これ、ポイントは司会者の恣意性にあるのでしょう。仮に司会者も正解を知らされておらず、クイズ参加者が選ばなかった2つのドアのどちらかをランダムに開けているのであれば、残された2つのドアの正解確率つまり当たりである確率はそれぞれ50%でしょう。でも、実際には、司会者はどのドアが当たりかを知っているわけで、司会者はいつもハズレのドアを開けるわけです(当たりのドアを開けてしまうとゲームが終わってしまう)。こうした司会者の恣意性があるからこそ、司会者が開けずに残した方のドアが当たりである確率が高い、だからクイズ参加者はドアを変えた方がいい、ということになるのでしょう。

我々人間の直感がアテにならないことがある、というのがよく分かる、おもしろいクイズ/パズルだと思いました。

by dantanno | 2025-06-21 13:49 | プライベート | Comments(0)

通訳・翻訳者 丹埜 段(たんの だん)のブログです。IRを中心にビジネス・ファイナンス系を専門としています。 通訳会社IRIS経営。http://iris-japan.jp


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