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IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線

今日は、IRで頻出する

Sales
Revenue
Earnings
Profit
Income
Gain

という、結構トリッキーな6つの表現について、資本市場の最前線にいるIR通訳者の立場から、
今後みなさんがこれらの言葉を聞いてもたじろがず、そして自信を持って自ら発信出来るよう、一つの軸を提供します。





自分には関係無いな・・・と思ったあなたへ
分かります。
発行体であれ投資家であれ、あるいはその他のIR関係者であれ、
現在国内オンリー・日本語メインのIRに従事されている方にとって、
Sales, Revenue, Earnings, Profit, Income, Gainなんて、少なくとも今は関係無い、というのは確かにおっしゃる通りです。 でも、ちょっとだけ視点を引き上げてみてください:




① 今、国内オンリーの発行体の方: 
今の内から、少しずつ海外IRを始めませんか? 外国の一流の機関投資家たちと対話し、その生の声を聴き、経営に反映させてみませんか。
そして、いずれはグローバル・オファリングをしましょう。ディールすなわちIPO/POこそ資本市場の最前線です(と断言)。外国人向けに株はもちろん、グリーンボンドも発行してください。資金調達の幅を広げましょう。

海外IRについて、馴染みの証券会社のバンカーに相談してみてください。そして、もっといいのは投資家に直接アプローチすることです。で、海外機関投資家から証券会社に言ってもらうんです、「あんなおもしろい発行体がいるのに、なんでおたくのアナリストはカバーしてないの?」と。そうすると証券会社としてもウカウカしていられなくなります。

海外IRを正式に始めるのはまだ先でもいいかもしれませんが、まずはスモール・スタート出来るんです、新年早々にでも。
今、外国人投資家とあえて対話をしない理由ってありますか? 国内IRをあんなに精力的にがんばってるのに。活動を日本国内に限定するのは、資本市場のごくごく限られた場所でしかプレーしないということであり、実にもったいない。世界は広いんです。

そして、海外IRで外国の機関投資家と対話をする際、その対話がご自身で直接であれ通訳者経由であれ、投資家の質問を受けたりご自身が発言する際に必ず出るこのSales, Revenue, Earnings, Profit, Income, Gain自信を持って、自在に使い分けてください。それを可能にするための記事がこれです。




(今回の記事とは別件になりますが、以前、IR担当の方向けに書いた記事はこちら↓)





② 今、国内オンリーの機関投資家・個人投資家の方: 
外国の一流企業のIRテレカンを、ご自身の投資活動の参考にしてください。例えばJP MorganであればCEOのJamie Dimonや、そのCFOがIRをしてるんですよ。そしてFidelityやCapitalやGSAMのPMやアナリストたちが鋭い質問をしているんです。彼ら・彼女らがどのような質問を投げ、それに発行体はどう応えているのか。そのライブな迫力、結構シビレます。みなさんご自身の企業スクリーニング・分析・取材・投資活動の参考にきっとなるはずです。

今や自動翻訳・通訳機能が充実していますから、みんながなんて言っているかは大体分かります。そして、そうしたIRプレゼンやQ&Aセッションの中でSales, Revenue, Earnings, Profit, Income, Gain必ず出て来ます。で、後述するようにこうした用語は機械にはうまく訳せないんですよ。辞書が使えない。だから、その際にこのブログ記事を思い出し、役立ててください。





「基本的な英文会計用語なんてもう分かっている」という方: 

私は通訳者として日頃からコミュニケーションに携わっています。
コミュニケーションにおいて「相手の言っていることが分からない」ことよりも恐いものってなんだか分かりますか? そう、「分かった気になる」ことです。



どんなコミュニケーションも、概ね以下のような流れを経ます:
 
1.話し手の頭の中に、伝えたいイメージ(A)がある。
2.話し手は、それを説明するために「XXX」と言葉を発する
3.その言葉が(ときには通訳者を介して)聴き手の耳に届く
4.ここで聴き手が(なるほど、XXXね・・・)と言葉を認識し、それを元に、自分の頭の中でイメージを構築する。


ここでコミュニケーションの1ターンが完結するんですが、その際、聴き手の頭の中で出来上がるイメージは、話し手の頭の中にあったAではなく、A'なんです。必ず、少しズレます。このロスをミニマイズ/最小化するのがいいコミュニケーションでありいい通訳なんですが、ロスは必ずあるんです、話し手と聴き手が同じ人間ではない以上。A≠A'なんです。


この後詳説しますが、外国人投資家が例えば"Earnings"と言ったとき、それが一体何を意味するか、というのは実は非常に難しいことなんです。厳密さが求められる会計の話なのに曖昧なんです。そしてさらに厄介なことに、投資家自身が自分の意図、言いたいことをちゃんと把握していないことだってよくあるんです。だからこそ、それを聴いているこっちがSales, Revenue, Earnings, Profit, Income, Gainという6語に惑わされないためにも、読者であるみなさんご自身の中でしっかりとした軸を持っていることは、どんな立場であれ、IRに携わる方にとって非常に大事なんです。






読んでもらえないことを恐れるあまり前置きが長くなり失礼しました。でも、それぐらい重要なトピックなんです、これは。

極端な話、今読まなくても大丈夫です。将来、これが必要となる日が必ず来ますから(断言)、その時に思いだしていただくのでも結構です。でも出来れば今!







自己紹介
私はIRを専門とする通訳者です。自身、通訳者として活動すると共に、小さな通訳エージェントをやっています。

企業はいろいろなIR活動を行っていますが、私はその中でも四半期決算発表時の同時通訳・翻訳と、そして海外IRというややニッチな分野を中心に担当しています。
海外IRというのは、日本の上場企業(*発行体と言います)の社長が海外に行き、外国の機関投資家と会って回るIR活動を指しますが、私はそれに同行して通訳をしているんです。

コロナ前、多いときは年25回ぐらい海外出張に行き、パスポートのスタンプを押す箇所が無くなったのでページ数を追加したりしていました。最近、ようやく海外案件が復活し始めたのは喜ばしい限りです。



通訳者になる前はサラリーマンをしていまして、三菱商事、モルガン・スタンレーで計10年間、アラスカから天然ガスを輸入したり不動産の証券化などをやっていました。金融危機でモルスタをクビになり、通訳者に転向した次第です。




自分はハーフとして生まれ、子供の頃から日本語と英語の教育を同時進行の二倍速で受けました。インター行きながらSAPIX、公立小行きながら夏休みに一人で海外留学というスパルタンな世界で育ちました。
そして上記の通り日本の大企業、アメリカの大企業を両方、計10年経験し、サラリーマン生活が終わってからはこれまた10年以上に渡りIR通訳者として、発行体と機関投資家がぶつかり合うプロの資本市場をアリーナ席で見てきました。「見てきた」っていうか、モロに「参加」です。これまでに1兆円近くのエクイティ・ファイナンス(IPO/PO)の海外ロードショーにおいて、上場企業各社の社長IRの通訳を担当してきました。





通訳者になってからはもちろんのこと、その前のサラリーマン時代もずっとSales, Revenue, Earnings, Profit, Income, Gainという6語と格闘してきました。分かるようで分からないこれらの語をどう理解し、どう表現し、そしてどう訳すか。
その結果あみ出した、考え方の軸のようなものがありまして、今日はその全てを、なるべく分かりやすく書きます。





Three Pigs
いちいちSales, Revenue, Earnings, Profit, Income, Gainと書くのは面倒なので(といってもコピペしてるだけですが)、ちょっと前に流行ったタテ読みをし、

Sales
Revenue
Earnings
Profit
Income
Gain

→ 頭文字を取って SREPIG   とします。



で、SREPIGを口に出して言うと、なんだか「スレピッグ」・「スリー・ピッグ」みたいになるので(?)、いっそのこと「スリー・ピッグズ」すなわちThree Pigs(3匹の子ぶた)と略したいと思います。

以下、Sales, Revenue, Earnings, Profit, Income, Gain → Three Pigsでお願いします。



IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線_d0237270_07095460.jpg




Three Pigsは難しい
「難しい」は、日本企業のIRにおける頻出ワードです。IRミーティング本番中も、その前後の雑談においてもよく出ます。いろんなことが「難しい」んです。
我々通訳者はそれを"difficult"とか"hard"とか、あるいは"tricky"とか"onerous"とかケースバイケースでいろんな訳し方をしているわけですが、その訳はたいていの場合、外国人投資家にとってあまり意味をなしません

これを意味のあるものにするには、ただ「難しい」と言うだけではなく、一体何がどう難しいのかを聴き手に説明する必要があります。


さて、Three Pigsの「難しさ」はどこに原因があるんでしょう?




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Three Pigsの難しさは、そのあやふやさにあります。各語に複数通りの意味がありうるんです。
そう、厳密さが求められる会計用語なのに!あやふやなんです。



信じられないことに、外国人投資家たちは結構アバウトにThree Pigsを口にしています。同じ”Revenue"でも、状況によって意味が微妙に異なるんです。



人によって、あるいはケースによって意味が大きく異なればまだいいんですよ。だって、それであれば意味の違いが発覚しやすいから。
Three Pigsが厄介なのは、各人の使い方の違いがとても微妙(Subtle)だという点です。だからそのズレに誰も気付かぬうちに会話が進み、徐々にそのズレが増幅(Amplify)されていき、結果「言った言わない」ぐらいのズレにつながるケースもあるんです。





Three Pigsのもう一つ厄介な点は、辞書がアテにならないということです。




通常、意味の分からない言葉があれば辞書を引けばいいですよね、そこに意味が書いてあるから。でもThree Pigsの場合はそれが通用しない

まさかそんな、、、と思うのであれば、じゃあ試しに例えばEarningsを英和辞典で引いてみてください。



僕の手元の辞書だと:
辞書A: 「稼ぎ高、所得、稼いだもの」
辞書B: 「利益、賃金、給料、給与、報酬、収益、ペイ、利潤、給金」



厳しくないですかww? 
特に辞書Bとか、バラエティ豊富すぎて全然分かんないですよね辞書作っている人たちも全然分かっていないんですよ。

しかもですよ、訳語として記載されている中の、例えば
「利益」って英語に訳し戻すとProfit(≠Earnings)だし、
「所得」はIncome(≠Earnings)だし、
「収益」はRevenue(≠Earnings)だったりするんですよ。
「給料」はSalary(≠Earnings)ですしね。

全然Earningsじゃないんですよ。もう完全にグチャグチャです。
Appleを辞書で引けば「リンゴ」だし、「リンゴ」を辞書で引けばAppleなのとは大違いなんです、Three Pigsは。

ちなみにこれ、辞書が悪いのではありません。Three Pigsがそれだけあやふやで深淵な世界なんです。




ポイント:Three Pigsはあやふやである




軸を提供する
さて、
「あやふやである」
「辞書がアテにならない」
「難しい」
などと不平を言っていてもIRは進まないし、日本株も売れません。

だからこそ、このブログ記事ではみなさんが、相手がThree Pigsを使ってきたときにそれを自信を持って受け止め、かつご自身からもしっかりとThree Pigsを発信していけるよう、一つの軸を提供します。




ポイント:Three Pigsを使いこなすには軸が必要




分かりやすく書きます
誰もLeave behindすなわち置いてけぼりにしたくないので、基本的なところから、登山で言えば1合目から考えていきます。各項目の難易度を五段階評価で記載しているので参考にしてください。上級者の方、前半だけちょっとご辛抱ください、すぐにややこしくなりますんで。




では行きましょう!




第1合目:Sales (難易度 ★☆☆☆☆)
Salesは「売上」です。売上と訳せばいい。
でも、世の中訳せれば終わりというわけではありません。




通訳は文字通り「訳す」ことが仕事なんですが、「訳」だけでなく常に「意味」も考える必要があります。訳と意味は違うんです。


例えば
Apple であれば、
は「リンゴ」
意味は「丸くて赤くて、食べると美味しい果物」みたいな感じです。
意味と訳は違うんです。

(全くの余談ですが、以前、半導体系の会社(X社)のIRミーティングで、投資家がX社の顧客について質問をしました。上位顧客にはどういうところが名を連ねているんだ?と。
X社にとっては、GAFAの一角を占めるAppleが大口顧客だったんですが、Appleって情報管理が厳しく、そういう関係があることをあまり外部に言ってはいけない、とX社はAppleから言われていたんですね。
そこでIR担当の方は、苦肉の策として「一番のお客様は、、、社名は言えないんですが、あのー、、リンゴの会社です」と言ったんです。
で、僕がそれを英語に訳す際、訳が結局 "It's Apple w" になってしまい、IR担当者、投資家、僕とで大笑いするという一件が以前ありました。"It's the fruit company"みたいに訳せばよかったかもしれませんね)




さて、Salesの訳は「売上」だとして、その意味は? 売上ってなんでしたっけ?



(簡単すぎ注意!) 売上とは
ある会社の「売上」は、
一定期間(例えば4月1日から翌年の3月31日まで)を対象とし、
それが自動車メーカーであれば、その一定期間にクルマを製造・販売した見合いに受け取った収入 であり、
それがサービス業の会社であれば、その一定期間にサービスを提供した見合いに受け取った収入 です。

メーカー VS サービス業、といったセクターの違いは、この後の英語表現の際に再び登場します。



話をまとめると、売上というのはその会社がある期間内に行う事業(クルマを売ったりサービスを提供したり)から得られる収入です。




(簡単すぎ注意!) 売上 ≠ Cash in
「売上」はその会社の収入を指すわけですが、「売上」=「入ってきたお金」ではない、というのは多くの方が既にご存じのところですよね。
例えばお金を借りればお金が入ってきますがそれは売上ではないし、今売り上げたのにお金が入ってくるのはもっと後、ということだってよくあります。売上≠Cash in。




(簡単すぎ注意!) 「売上」と「売上高」
この2つは基本的に同義と思っていいと思います。前者はより概念感が強く、後者はより金額感が強いでしょうか。でもまあ同じと思ってOK。




ポイント:”Sales” = 「売上」


ポイント:売上は、その会社が、ある期間内に行う事業から得られる収入




話がシンプルなのはここまでです。2合目に突入します。





第2合目:Sales、Cost、Profit (難易度 ★☆☆☆)

Sales - Cost = Profit
です。

売上 - コスト(費用) = 利益
です。


つまり
  Sales  売上
 - Cost  コスト(費用)
ーーーーーーーーーーーー
  Profit  利益
です。



当たり前じゃないかっていう話ですが、これがこの後に来るThree Pigsの荒波を乗り越える際の唯一の羅針盤となります。Sales - Cost = Profitです。




キャッシュの動きはまた別
繰り返しになりますが、キャッシュすなわち現金の動きはまた別です。
Sales - Cost = Profit
Cash in - Cash out = Net cashflow すなわち 収入 - 支出 = 収支
とは別の話です。






第3合目:Cost と Expense(s) (難易度 ★★☆☆☆)

もう3合目です。


Cost と Expense(s)

この2つは同義だと思ってOKです。だったらわざわざ分けなくていいじゃんという話ですが、とにかく同義。







Costの和訳は「コスト」あるいは「費用」。

Expense(s)の訳は「費用」。Expense(s)をあえて「コスト」と和訳するのはなんだか違和感がありますよね。定食屋さんで「ご飯おかわりください」とお願いしたらおばちゃんに「はい、ライスね」と訳されるのと同じ違和感。違うか。







単数・複数問題!

賢明な読者はもうお気づきでしょうが、ExpenseっていうのはExpenseと単数だったり、Expensesと複数形だったりするんですね。



それで行くと、Three PigsではExpense以外にも

Sale? Sales?

Revenue? Revenues?

Profit? Profits?

番外編 Asset? Assets?

など、いろいろと気になってきます。ですので、その辺についてもこの際しっかり確認しておき、みなさんが二度と迷わないようにしておきましょう。








Three Pigsそれぞれの単数・複数について、肝心のIRでよく使う方がどちらなのか、そしてそれぞれについて一言書きますね:



Sales          ”Sale”っていうと文字通り「セール」つまり値引き販売、あるいは「売却」、あるいは単一の売上取引を指します。IRでは”Sale”は使いません。「売上」は必ずSalesです。


Revenue/revenues  Revenueについては、正直、単数でも複数でもどっちでもOKです。Operating revenue、Operating revenues。うん、別にどっちでもいいです


Earnings      これはなぜかEarningって言わないんですね、不思議。sを取ると動詞(Earning = Earnしてる = 稼いでる)みたいになっちゃうからでしょうか。


Expenses      費用については、Salesすなわち売上同様、Expenseと単数にすると「単一の費用項目」つまり「ある1件の支出」というイメージがあります。IRではExpensesです。


Cost/costs     コストについてはまあどっちも使いますかね。どっちもOK


Profit/profits     Profitは結構Revenueと近く、まあ単数・複数どっちでもいいです。でも単数ですかね。Operating profit VS Operating profits。うん、単数ですね。


Income      これはなぜかIncomesって言わないんですね、不思議


Gain/gains    どっちでもOK。Gainだと「1件の」つまり「ある取引からの益」的なニュアンスもありますが、一方で「キャピタル・ゲイン」みたいにジェネラルなことを言う際も単数を使ったりするので、単数・複数どっちでもOKです。


おまけ:Asset/assets  単一の資産を指すのであればAsset、「総資産」みたいなことを言いたいならAssets(複数)です。






話をまとめると:


SalesとIncome(とProfit)は単数オンリー

EarningsとExpensesは複数オンリー

あとは全部単数・複数と両方使います。







余談、っていうか訳者のぼやきなんですけど、

例えば「売上」とか「総資産」といった日本語を英訳する際、売上 → Sales、総資産 → Total assetsと訳したとしましょう。複数形です。となると、それに続く語も

Sales were 1 trillion yen

Total assets are 1 trillion yen

つまりwere/areと複数形にしないといけないのかな、とも思うんですが、"Sales were"ってどうしても違和感あるんですよね。だから僕は単数形で訳しています。”Last year's sales was 1 trillion yen"って。Salesにsが付いてるから一応複数のはずなんだけど、でも「昨年の売上」(あるいは「総資産」)という一つのものとして扱う感じです。以前、翻訳の案件でそうやって単数形で訳し、クライアントから複数形に直されたこともありますが、僕はやっぱり単数の方が好きです。


ちなみにその点日本語はラクですね、売上はあくまでも売上であり、「売上s」ではないので。単数・複数の惑いが無いところがいいですね、日本語は。








第4合目:Revenue (難易度 ★★★☆☆)

Revenue Salesと大体同じようなものです。



ポイント:RevenueとSalesは大体同じ


1.RevenueとSalesは大体同じで、
2.Sales = 売上ですから、
3.Revenue ≓ 売上
ということになります。

Revenueは、まあ「売上」です。



RevenueとSalesは大体同じだけど、イコールではないのがポイントです。

では、RevenueとSalesはどう違うんでしょうか。大きく2つ違いがあります:



違い1.業種(セクターともいう)
Salesというのは、メーカーみたいにモノを売る会社の売上のことを言いたいときによく使います。
一方でRevenueは、銀行とかのように、モノではなくサービスを提供する会社の売上のことを言いたいときによく使います。

ちなみにRevenueはメーカーでもサービス業でもどちらでも使える感じがするし実際どちらでも使われていますが、Salesを、例えば銀行について使うとちょっと違和感があります。Salesはやっぱりモノを売る会社について使った方が適切です。




SalesとRevenueの違い2.広義と狭義
こちらがより本質的な違いです。
Sales = 売上とシンプルですが、Revenueには実は広義と狭義、2つの意味があります。



広義のRevenue:   収益、収入、稼ぎみたいな広い意味
狭義のRevenue: 「売上」だけを指す狭い意味。
         尚、Revenueをこのように狭義に使いたいときは単にRevenueとは言わずOperating revenue(営業収益)と言ったりします。営業収益 = 売上です。




ポイント:Revenueには広義(収益・稼ぎ)と狭義(売上)と、2つの意味がある!



ポイント:Three Pigsにおいては、こうした広義と狭義が頻発する。だからややこしい



では、SalesとRevenueについて、外国人と対峙したときのシチュエーション別対処法を解説していきます:



1.相手が”Sales"と言った場合
これが一番シンプルなパターンですね。
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「売上」と言っています。



2.相手が"Revenue"と言った場合
この場合、聴き手である我々サイドで解釈・判断が求められます。相手は広義で言っているのか、狭義で言っているのか
その判断の結果の意味の違いは以下の通り:
IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線_d0237270_12062783.png


3.相手が"Operating revenue"と言った場合
相手が丁寧に「Operating」と頭に付けてくれると助かりますね。そうすれば狭義のRevenueのことを言っていることが分かり、営業収益すなわち売上と解釈すればいいことが分かりますから。
IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線_d0237270_12063368.png



ちなみに、Revenueに関連して「レベニューシェア」という表現がありますね。
例えばその会社が何らかのプラットフォーム上で事業を行っている場合に、エンドユーザーから入ってくる収益(すなわち売上)プラットフォーム運営企業(Platformerとか言います)と、そのプラットフォーム上で事業を行っている企業とで分け合うことがありますが、それを「レベニューシェア」つまり収益を分け合う、と表現します。




Net revenueという表現
企業の財務諸表を見ていてNet revenueつまり「純収益」的な表現を見かけることがあります。これを理解するためにはまずGrossとNetを理解する必要があります。




Gross と Net
Grossというのは、要するに総額です。全部乗せです。日本語にすると
「総」 総資産とか
「粗」 粗利益(Gross profit)とか
を指します。全体、トータル、総額です。



そのGrossからチャーシューとか味玉とか、何かを控除(つまり引き算)したものがNetです。



自分の身近な例で恐縮ですが、我々通訳者の多くは通訳エージェントに登録して仕事をしていまして、その場合、クライアントが支払った額(100)がGross、そしてそこからエージェントの手数料(仮に30)を差し引いた残りつまりNetの部分(70)が通訳者の取り分、となります。これがGrossとNetです。



<超余談>
IRにおけるGrossとNetは、例えば小売業においてGrossの売上があって、そこから「お客さんから返品された分」を差し引いたNetの売上があったりします。
あと、金融業においてはGrossとNetという関係がよく出て来ます。(さらに余談ですが、金融において、P/Lのかなり下というか真ん中あたりでNet revenueみたいな項目が登場することがありますが、この場合は(revenueと言いつつも)結構「利益」に近い項目と捉えていいと思います。営業収益から営業費用を「控除(Net)」した額、つまり実質的に利益に近いものなんでしょうね。)




とにかく、
Net○○(純○○)というのは、「Gross○○」から何かを差し引いたものなんだな、
と覚えておけばOKです。




Top line sales / top line revenueという表現
売上に関連するもう一つの表現としてTop lineというのがあります。Top lineの後にsalesやrevenueが続くこともあるし、単にTop lineだけのこともあります。これ、要するに「売上」という意味です。それをかっこよく言ってるだけです。ちなみにこの表現はIR界隈ではかなり一般的で、日本語で「トップライン」と言っても通じることがほとんど。
(ついでに言うと、「売上」のことをTurnoverと言うこともあります。Top line同様、訳・意味共に「売上」でOKです。ちなみにTurnoverは在庫の回転率とか、社員の入退社のペースを指すこともあります)


なぜ売上のことをTop lineと言うのか?
P/L(損益計算書)の一番上の行が「売上」だからです。トップのラインなんですよ。
ここで、勘のいい読者の方は思ったかもしれませんが、そう、P/Lの一番下にあるラインつまりProfit(=利益)のことはBottom lineと言ったりもするんです。


以前見たSales - Cost = Profitの計算式ですが、あれにあてはめると

Sales   (Top line)
- Cost
------------------------------
Profit  (Bottom line)


です。
(全くの余談ですが、IPO/POのようなディール案件で、証券会社が複数入ることが多いんですが、その中でもリード役を務める主幹事証券会社のことを「トップ・レフト」と言ったりします。なぜそう言うかというと、主幹事証券会社の社名は、目論見書(Offering circular, あるいはProspectus)の表紙の一番左上に書かれるからです。)


Top line(=売上)という表現をどうしても使ってみたい場合、じゃあそれをSalesとどう使い分ければいいのか、ということですが、
数字としての「売上」や「利益」のことを言いたいときはSales / profit  →  How much sales are you expecting next year?とか。金額を問う質問
数字ではなく概念として言いたいときは Top line / bottom line  →  How are you going to grow the top line from here?とか。方向性・戦略を問う質問
を使うといいでしょう。「数字として/概念として」ってどういう意味だよ、というのは確かにありますが、でも言葉ってそういうものです。



以上、Revenueでした。



Sales
Revenue
← 今ココ
Earnings
Profit
Income
Gain




第5合目:収益 (難易度 ★★★★☆)

次は英語ではなく、日本語🇯🇵の「収益」について。

「収益」も、なんだか分かるような分からないような用語ですよね。


もしおヒマだったら、辞書を2つ3つ引いてみてください。「収益」という語の意味について、辞書サイドがいかに混乱しているかが如実に分かりますから。







実は、収益についてはRevenue同様、広義と狭義があります。








ポイント:「収益」にも広義と狭義がある





そして、収益もRevenue同様、頭に「営業」すなわち”Operating"を付けることでだいぶ分かりやすくなります。






(おさらい)

Revenue(広義): 収益・収入・稼ぎ

Revenue(狭義): 売上。狭義で使いたいときはOperating revenueともいう。その場合の和訳は「営業収益」




(New)

収益(広義): 稼ぎ。この場合は売上とか利益とかを特定せず、全部ひっくるめた広い概念。社長が「収益をどんどん伸ばすぞ!」と言った場合はこっちの広義の意味で言っています。

収益(狭義): 売上。狭義で使いたいときは「営業収益」ともいう。その場合の英訳は”Operating revenue"







上記の通り、Revenueと収益はほぼ鏡張りになっており、似ているんです。







ポイント:Revenue  ←→  収益



ちなみに、Revenue/収益の広義・狭義は、事業からの収入かどうかという切り口でも整理できますね。


1.とにかくあらゆる収入をカバーしたければ広義のRevenue、広義の収益を使う。あるいは、「稼ぐ力」みたいな大きな話をしたい場合も広義の方を使う。

2.一方、そうではなくて「事業からの収入」だけをカバーしたければ狭義のRevenue/収益、つまりOperating revenue/営業収益を使う、という整理の仕方も出来ます。





そして、「稼ぎ・業績」を意味する広義のRevenue/収益を表現する時に便利な表現が、この次に登場するEarningsなんです。でもそれはまだ先の話。ここでは以下の2ポイントだけ押さえてください:









ポイント:「収益」は”Revenue"同様、広義と狭義の意味がある




ポイント:「収益」を狭義で使いたい場合は「営業」をつけ「営業収益」とするといい。意味は「売上」であり、その訳はOperating revenue





「収益」は「利益」ではない。でも「収益性」は「利益」の話である、というややこしさ

「収益」という語がややこしいのは「利益」を連想させる「益」という字が入っちゃってるから、っていうのもありますよね。実際には上述の通り、収益は「売上」系の話であり「利益」のことを言ってるのではないんです。


でもですね、話をさらにややこしくさせるのが「収益性」という表現。これは売上ではなく「利益」に関する話なんですよ。



収益性というのは、要するに「利益率」のことです。マージンとも言います。

利益率は、「利益 ÷ 売上」で計算されます。売上に比し利益がどれぐらい効率的に出ているかを表す利益系の指標です。英語だとProfitabilityです。







ポイント:「収益」は利益ではなく売上系の話

      だが、ややこしいことに「収益性」だけは利益率のことを指す利益系の表現。英語はProfitability






第6合目:Earnings (難易度 ★★★★★

EarningsはThree Pigsの中でも広範な意味を持つ、だからこそ茫洋とした語だと思います。ご自身で気付いているかどうかは別として、このEarningsに悩まされている人は多いはずです。



Earningsにはいろんな意味がありますが、ここはもう、「業績」と覚えてしまいましょう。Earningsは「業績」です。








ーーー







通訳は漁に似たところがあります。網を広げて、そして狭めるんです。



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相手の発言を受け止める際は、網を広げるだけ広げます。こういう意味かもしれない、ああいう意味かもしれない。いや、もしかしたら何か別の解釈があるかもしれない。何か見落としは無いか。


網を広げきったところで、今度はそれを狭めます。っていうのは、いつまでも「意味がああかもしれないこうかもしれない」と言っていては訳せないからです。いろんな候補をリストアップした上で、一気に(特に同時通訳をしている際は瞬間的に、ときには相手が発言するもうその前から)網を狭め、「きっとこうに違いない」と決めつけていき、訳を決定します。



いろんな考え方があるよね〜、あ、そういう発想もステキね、という優しい母親の心から、

絶対にこうだ、これしかない!と断定する父親に移行するような感じです。いい訳のためには両方必要なんです。






「Earnings=業績」と↑で断定しましたが、ご推察の通り、ことはそう単純ではありません。


では、Earningsの「業績」以外の意味としてはどういうものがあるのか。

「利益」です。利益という意味で使われることがあるんです。

あと、売上を含む「収益」と広義に使われていることもあります。





そうやって網を広げていくとキリがなくなるので、ここはもうズバリ、Earnings = 業績でいいです。たまーに「利益」を意味することもある、ぐらいに覚えておけばいいです。







ポイント:Earnings = 業績。ときどき利益。ときどき収益






概念の広さという観点から順に並べてみると、

Earnings(業績)Revenue(収益。狭義であれば営業収益=売上)Sales(売上)

です。







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Earningsを他のThree Pigs用語と対比するとこうです:








IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線_d0237270_01072178.png






Earningsだけ、ちょっと違う位置付けにあるのがお分かりいただけると思います。この、P/L(損益計算書)を表す逆三角形全体をひっくるめてEarningsなんです。







IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線_d0237270_22344206.png






Earningsは便利

その曖昧さ故にときに意味が分かりにくいEarningsですが、

その曖昧さ故に、こっちがそれを発信する際は絶大な威力を発揮します。便利なんですよ。


つまりですね、ある会社の話をしていて、自分が売上のことを言いたいのか利益のことを言いたいのか分からないとき、つまり結構広めに「業績」と言いたいとき、そういうシーンではバンバンEarningsを使っちゃいましょう。IR通訳者である僕はいつもそうしています。大抵の危機はこれで乗り切れます。


ちなみに「業績」と言いたいときにEarningsと同じく便利なのがPerformanceです。こちらはより具体的な数字から離れた概念的な表現でしょうか。






以上、Earningsでした。





S
ales
Revenue
Earnings
← 今ココ
Profit
Income
Gain




第7合目:Profit (難易度 ★★☆☆☆)

難易度が一気に下がって★★。もう後は山を下るだけです。






Profitは「利益」です。

Sales - Cost = ProfitのProfitです。







いろいろな利益

Profitにはいろいろとあって、P/Lの上から下へ順に:


Gross profit        粗利益、売上総利益

Operating profit    営業利益

Ordinary/recurring profit 経常利益

Pre-tax profit      税引前利益(PTI: Pre-tax incomeとも言う)

Net profit        当期純利益、純利益

(中にはProfit attributable to owners of parentみたいなマニアックなのもあります。翻訳では頻出しますがIRミーティングでは出ないし、気にしなくていいです。)



尚、各利益項目について「収益性」すなわちそれを売上で割って計算する利益率、Profitabilityを算出することもあります。








IRで一番よく出るのはOperating profitすなわち営業利益です。

これが企業の実態を一番よく表す(と多くの投資家が思っているのでしょう)。


営業利益 ÷ 売上 =営業利益率

これがOPマージン(Operating profit margin)です。






ポイント:IRにおいて一番重要な利益項目は営業利益(Operating profitである








あと、利益系の概念としてEBITDAを意識している投資家も多いので、今度よかったら調べてみてください、EBITDA。発音は「イビッダ」みたいな感じ。








ProfitはSalesよりも大事
TVで成金社長の豪邸が紹介され「年商50億!」とコメンテーター達が騒ぎ立てています。
そこはすかさず「でもそれってSalesのことですよね?肝心のProfitは?」とひろゆきばりにツッコむようにしましょう。
年商はあくまでも「売上」の話であり「利益」ではありません。年商(すなわち売上)が50億でも、費用が51億であれば利益はマイナス1億円で、年収300万円のサラリーマンの方がはるかに稼いでいることになります。
Sales - Cost = Profitなんです。







IRでは増減が大事。何に比しての増減なのかも大事

Profitに限らずですが、IRでは増・減が取り沙汰されます。Incrementalな動きat the fringeが大事なんです。

で、増減を考える際は何に比しての、何からの増・減なのかを明確にすることが必須です。


前年比(year-on-year)なのか。

前四半期比(quarter-on-quarter)なのか。

計画比なのか。 (ちなみに利益が計画を上回っていたらoutperforming、下回っていたらunderperformingとか言います)





以上がProfitです。








第8合目:Income (難易度 ★★★☆☆)

次はIncomeなんですが、これ、要するにProfitです。





ポイント:Incomeは要するにProfit
である







SalesとRevenueの関係同様、同じことを別の言い方しているだけなんですね。



一つ前のProfitのセクションのところで出て来たOperating profit(営業利益)ですが、そっくりそのまま

Operating incomeという表現があり、全く同義です。どちらも「営業利益」です。






ということでIncomeは要するにProfitなんですが、「要するに」っていうのがポイントで、完全に同義ではないんです。ではどう違うのか。







ProfitとIncomeの違い

例によって広義・狭義です。結局Three Pigsってこれなんですよね、広義・狭義。


Incomeの方がProfitよりも広い意味を含んでいます。


Profitが単に「利益」なのに対し、

Incomeは「利益」以外に「収入」とか「所得」という意味合いを含みます。

そういう意味ではSales(意味が「売上」と狭い)とRevenue(売上だけでなく稼ぎ・収益という意味も含む)との関係と似ています。







相手が発した”Income”が何を意味するのか、の分かりやすい見分け方は、

1.企業についての話であれば: Income = 利益

2.個人についての話であれば: Income = 所得

ということです。そしてそれに加えて

3.広義のIncomeであれば: 収入(これは企業にも個人にもあてはまる)





あと、余談ですが、同じ「利益」って言うにしても、なんとなくIncomeって言った方がカッコイイ気がします。Profitっていうとなんだか「儲かってまっか」感がゼロではないですが、Incomeと言うだけでちょっと洗練された感じがするのが不思議。ちなみに業種ごとの違い、つまりメーカーであればSales VS サービス業であればRevenue、みたいな区別はProfitとIncomeの間にはそれほど無い気がします。つまりどっちをどのセクターに使ってもいい。







第9合目:Gain (難易度 ★★☆☆☆)

最後、Gainは「益」です。

不動産売却益、とか。





利益と言えば利益なんですが、でも利益ではなく「益」なんですね。


Profit(利益)が本業から生み出されるものであるのに対し、Gainは本業以外からの収入であり、多くの場合一過性(One-off)の収入のことを指します。

タナボタ的な。


ちなみにGainの対義語はLoss(損失)ですかね。

で、LossっていうのはCost/expenseと異なる、という点も興味深いです。経常的な事業におけるコスト(Cost/expense)ではなく、一過性の損失(Loss)という位置付けです。







第10合目:全体像

以上、みなさんと一緒にSales, Revenue, Earnings, Profit, Income, Gainを見てきました。





Three Pigsへの対処法をまとめると: (ココ大事!)


1.Sales - Cost = Profit という基本形を常に頭に思い描いた上で、

2.受信時: Revenue, Earnings, Incomeなどの語については広義と狭義があることを常に意識する。相手がどの意味でそれを言っているのかを考える。ときには「どの意味で言ってるの?」と聞く

3.発信時: 当方がThree Pigsを発信する際は、なるべく曖昧さを排除し、相手にとって分かりやすくする。


これをやるだけで、コミュニケーションがだいぶラクに、かつ分かりやすくなります。








Three Pigsの英→日方向の全体像はこういう感じです:






IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線_d0237270_00515786.png






ちなみに逆方向、つまり日本語→英語についてまとめるとこうです:






IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線_d0237270_00564799.png





全体統合版あんちょこはこれ:





IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線_d0237270_08584194.png





困ったらいつでもこの表を見に来てくださいね。






まとめ
Three Pigsは、言葉と財務の境界線です。
右脳と左脳が出会うところです。
数字で表される企業業績が言葉に翻訳され、世界に向けて発信されるその発射台です。

このブログで紹介した通り、難しく分かりにくい面もありますが、だからこそ、ちゃんと自分の中に軸を持てば大きな武器になります。






一(いち)通訳者として、みなさんにお願いがあります。Three Pigsに限らずあらゆるコミュニケーションにおいて、強く意識して頂きたいことがあるんです。

記事の冒頭で、コミュニケーションのフローについて書きました。
会話の出発点となる「話し手の頭の中にあるAというイメージ」は、聴き手の頭にはA'としてしか伝わりません。必ずズレが生じます。あの人が見ているは、あなたに見えると少しだけ異なるんです。どんなに長年連れ添った夫婦や旧友でもそうですから、ほぼ初対面の者同士、仕事上の関係しか無い者同士ならなおさらです。これはコミュニケーションというものの宿命的な不完全性なんです。
だから、相手の言っていることを「分かった」気にならないでください。絶対に分かっていないので。その上で、分かろうと努力るのがいいコミュニケーションであり、いい人間関係なんです。

ズレが避けられないならもういいや、やめちゃえということではなく、コミュニケーションにズレがあるからこそそれをなるべく最小化すべく努力しましょう、と言いたいんです。そのためには、例えばProfitを使うかIncomeを使うか、という言葉の慎重な選択が必要だし、相手の言った”Earnings”が広義なのか狭義なのか、どんな意味で言っているのかを慮るEmpathy・思いやりが求められます、Three Pigsにおいても、それ以外のコミュニケーションにおいても





改めて、IR担当者の方へ
この記事の一番冒頭を思い出していただけますか。
Three Pigsというこのテーマについて「オレ/私には関係無いな・・・」と感じるであろう方へのメッセージを書きました。その内の、発行体の方、つまり今は国内事業オンリー・国内IRオンリーの発行体に改めてお伝えしたいです。貴社の海外IRというのは、決してそう遠い未来の話ではないかもしれません。

世界はあなたの会社のことをまだ知らないんです。それを「我ここにあり🇯🇵」と知らしめるのがIRの役割であり、底力ではないでしょうか。ぜひ海外に発信してください。こんな面白いユニークな会社が日本にあったのか!行ってみたい、会ってみたい、買ってみたい、と外国の一流投資家たちに思わせてください。今まで貴社のことを知らなかったこと、株を持てていないことを外国人投資家に心底口惜しがらせてください。そして何よりも、みなさんご自身が、今はまだ世界に知られていないことを口惜しがってください。

貴社が晴れて海外IRをするその際に、どうかこのThree Pigsをフル活用して頂ければうれしいです。




みなさん、よいIRを!!





IRの「Three Pigs(3匹の子ぶた): 言葉と財務の境界線_d0237270_07095460.jpg

by dantanno | 2022-12-25 08:24 | Comments(0)