「回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答回答」
→ 通訳者がそれを英訳する
「以上です」
→ 通訳者「・・・」
つまり、「以上です」が単独でぶっ込まれるケースが多く、それの訳に窮するわけです僕は。
「以上です」の英訳は「よろしくお願いします」とか「お疲れさまです」の英訳と同じぐらい難しい(当社比)んですが、それをあえて試みてみますね。全部ヘンなんですけどw、例えばこういう訳が考えられます:
1. That's it. もっとも直訳バージョンがこれですかね。ヘンです。
2. That concludes my answer. 1.の意訳バージョンでしょうか。「私の回答は終了しました」ということですよね。いいんだけど、いちいち訳に付けるか、という話。これもヘンです。
訳例を2つ挙げたところで思いましたけど、要するにアレですね、なぜ「以上です」が訳しにくいかというと、英語では回答の最後にこういうことばを付ける文化がそもそも無いからなんでしょうね。だから、日本語でしゃべってるときに最後に「以上です」と付けるのは全く不自然ではないのに、同じことを英語でやろうとすると(訳し方以前の問題として)なんだか不自然になるんですね、きっと。
3. Next question please. これはなかなかいいですね。企業の方がなぜ「以上です」と言うのか、を考えると、自分の質問が終わったことを投資家に伝え、次の質問どうぞ、ということを言いたいわけですよね。だとするとこれは上記2.のさらなる意訳バージョンというか、「愛のある思い汲み取り」系の訳ですかね。ということで結構いいんですが、回答のたびに「Next question please」というのもなんだか次の質問を促しすぎてる感があるというか、一度や二度ならいいけど1時間のIRミーティング中に何度も何度も「次の質問どうぞ」ってのはややヘンですよね。
4.Hope that answers your question. これ、僕たまに使うんですが、逆直訳すると要するに「お答えになっているといいんですが」みたいな意味の訳です。これを聞けば投資家は(なるほど、回答は終わったんだな)と感じるでしょうから目的は果たしているんですが、でも企業の方がそこまで自信なさげに「回答になっているでしょうか・・・」なんて全然言ってないのにこの訳を使うのはなんだかヘンだし、しかもこれが全回答の最後に付くとなるとますます違和感。
5.Thank you これは結構いいですね。"Thank you"っていうと締まるし、発言が終わったことが分かりやすい。しかもポジティブな用語です。まあでもいちいちサンキューサンキュー言い続けるのも、ね。。
6.訳さない 結局これが一番現実的な解で、現場ではこうしてます。これはこれでいいんですが、企業の方が発した「以上です」だけが空間に浮遊しそれを通訳者が訳さないというのもちょっと違和感なんですよね。言ったことは出来れば訳したい。でも訳しにくい。
他にも訳例はあるかもしれませんが、僕の考える限り、「以上です」というのはどのように処理・料理しようにもなんだか煮え切らない、どうもしっくり来ない。だから通訳者泣かせなんです(*文句ではありません)。
ここでもう一度原点に返り、企業の方がなぜ「以上です」と言うのかを考えてみると、自分の回答が終わったことを投資家に知らせるためです。そして次の質問を促すためです。そう考えると、まあしばらく黙っていれば投資家はそれに気付いて次の質問を始める、だから別に「以上です」と言わなくてもいいのかな、という気もします。
あとですね、ウデのいいIR通訳者であれば、
1.企業の方の回答内容を分析し、
2.(ああ、今のフレーズが回答の最終部分だな・・・)と判断し、
その上で
3.訳の最後に「ハイ、これで回答終わりですよ」感が出るような間合いとイントネーションをちゃんと入れるんですよ。例えば物語の最後に「ということで、ウサギはその後幸せに暮らしたとさ♪」みたいな、日本むかしばなしがちょうど終わるときの感じの間合い・抑揚・イントネーションで訳すことで投資家に(ハイ回答終わるよ〜)とサインを出しているんです。だからこそ企業の方はわざわざ「以上です」と言わなくても大丈夫だと思います、という文句ではなく雑感でした。現場からは以上です!