脳波から、その人が「言いたいこと」を読み取り、それをことばにして発する技術。
脳などの損傷により、意識があるにもかかわらず思っていることを口に出して話せない、という症状・状況に悩んでいる人にとってはすごい朗報だろうし、ぜひ実現してほしい技術。
でも、我々通訳者にとっては大問題(笑)。
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通訳者にとって、自動通訳・機械通訳は大きな脅威になりつつある。
日本の通訳者の中には、こう思っている人もいるかもしれない:
「自動通訳技術の進歩は、確かに気になる。でも、最初にその影響を受けるのは、英語・フランス語間とか、似通った言語間の通訳だろう。
一方、日本語・英語のように文法などが大きく異なる言語間の自動通訳はなかなか難しい(現に、まだ実現していない)。
だから、未来永劫ずっと大丈夫とは言わないが、当面の間は日・英の通訳は大丈夫なのではないか。」
僕もこう思っている。確かに日・英間の、しかも一定のクオリティを保った上での自動通訳はハードルが高いんだろうと思う。
しかし、日本語・英語のように大きく異なる言語間の通訳については、ことばを介した自動通訳よりも先に、そもそもことばをすっ飛ばした自動通訳になるだろう、と思っている。
そうなると、「ことばを使わない」ので、自動通訳がどうとか以前に、そもそも「通訳」が不要ということになる。
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ことばを介したコミュニケーションはロスが大きすぎる。
話し手は自分の思いをことばにし、聴き手はそのことばを手がかりに話し手の思いを探りに行くわけだが、思い→ことば→思いの変換プロセスにおけるロスが大きすぎて、聴き手の心に届く「思い」は、当初の、つまり話し手の心の中の「思い」とは大きく異なることが多い。
ことばなんて必要悪。
出来ることなら、ことばを使わずに、思っていることをそのまま相手に伝えられればベスト。
例えで言うと、
「寒いなぁ、暖を取りたいなぁ」
と思ったときに、
1. 地中に埋まっている石油を掘り出して、それを燃やして電力を作り、その電力を送電し、届いた電力を使って電気ヒーターで暖をとるのと、
2. 石油を燃やして暖をとるのと、
どっちが効率的なのか、みたいな話。
「石油/電気」の場合、もしかしたら意外と1.の方が効率的なのかもしれないが(笑)、「思い/ことば」の場合、ことばを介さなくていい方が間違い無く効率的。
だって、
1. 話し手が、その思いをことばに変換する際に正確性がかなり失われるし、
2. (異言語間の会話であれば)通訳者が話し手の発言を訳す際にロスが生じるし、
3. 聴き手はえてして話をちゃんと聞いていないし、
4. 聴き手は、聞いた話を(きっとこういう意味だろう・・・)と解釈するが、その解釈はえてして不正確。
子供の「伝言ゲーム」のように、出発点である「話し手の思い」は、聴き手の脳に届くまでにはかなり大きく曲解・損傷されてしまっている。そしてそれが各種誤解や摩擦を生んでいる。
これは、同一言語間のコミュニケーションのときもそう。そして、通訳を介する異言語間のコミュニケーションの場合は、そのロスはさらに大きく増幅される。(上手な通訳者はそのロスを最小限にとどめることが出来る)。
ことばを介したコミュニケーションに対し、話し手の思いをそのまま(電気信号、という形で)聴き手の脳に届けられたら?Brain to brainでコミュニケーション出来ちゃったら?
「思い→電気信号」の変換がどの程度正確に出来るのか次第だが、もしそれがある程度正確に出来るのであれば、「ことばをすっ飛ばしたコミュニケーション」は、複数段階のロスが発生する「ことばおよび通訳を介したコミュニケーション」よりもはるかにすばらしい。
そしてこれは、通訳を使わない、つまり同じ国の人同士のコミュニケーションも大幅に改善させる力を持っている。
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上記記事の事例は、話し手の「思い→言葉」の部分のコンバージョンを機械が代わりに出来るようになります、という話。だから、僕が恐れている「ことばをすっ飛ばしたコミュニケーション」そのものではないが、それへの第一歩。
次の一歩は、「思い→思い」という感じで、話し手の思いをそのまま「思い」として聴き手の脳(耳ではなく)に伝える、というステップに行く。そうなると、ことばが不要になり、通訳が不要になる。
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もし我々の子供が、親である我々を見て
「パパ、わたしも通訳者になりたい」
なーんてうれしいことを言ってくれた場合、それにどう答えればいいのか。実に複雑な気持ちになる。
「ぜひがんばって。すばらしい仕事だよ」
と言いたい気持ちが強いが、一方で
「これからの時代、やめておいた方がいいかもよ。。」
とも言いたいかもしれない。悩ましい。
きっと近い内に来るであろう、機械通訳の時代に向け、我々人間通訳者はどうすればいいのか。
今から転職活動をした方がいいのか?
思うに、「普通の」通訳はもう生き残れないと思う。