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イギリスの「問題」を考える⑤: 職員サイドの証言に見る、彼ら・彼女らのメンタリティー(後編)

(最初の記事はこちら

このテーマについて、毎日ブログを連載するつもりが、なにせ半分イギリス人なもので、ついちょっと間が空いてしまった。再開します。

前回の記事で、利用客が職員に意見/文句を言った事例、そしてその意見/文句に対する職員側の反応と名語録を紹介した。日本では、職員サイドのこのような対応・反応は考えられない。イギリスの職員のこうした対応の裏にある背景や考え方は何なのか。それら事例に共通するメンタリティーとは何か。

いくつか、共通項的な、カギとなるポイントがある気がするので、それらについて考えてみる。
重複する内容もあるが、構わず書いてみる。
ちょっとグチっぽくなるが、今回の連載の目的はあくまでも「グチ」ではなく、ポジティブに考えることであることを忘れずに読んでいただきたい。




<謝らない>

とにかく謝らない。もう、逆に感心するほど謝らない。

なぜ謝らないのか。
悪いと思っているけど謝らないのか、あるいは、悪いと思っていないから謝らないのか。

1.悪いと思っているのに謝らないケースもあるだろう。謝ったら負けだと思っているのか?謝ってしまったら、非を認めたことになるから?(っていうか認めようよ、って話だが(笑))、だから謝らないのか?日本であれば、悪かったときに「ちゃんと謝ることができる人」がかっこいい/男らしい、とされているが(注:戦争中にやった「悪いこと」はちょっと例外)、イギリスではそうではないのか?

2.悪いと思っていない? → 悪いと思っているのに謝らないのではなく、そもそも悪いと思っていない可能性がある。なぜ悪いと思わないのか、については以下の各項目でそのメンタリティーを考える。



<言い訳をする。逆ギレをする>

「謝らない」と関連する項目。
英語でDefensiveという表現があるが、まさにそれ。客から何か意見/批判を受けたとき、「そうか、客はそう思うのか、なるほどなあみたいに参考にすればいいものを、そうではなく、客からの意見/批判を「攻撃」と感じ、それに対して必死に防戦してくる。「なにを?!こっちの立場はこうだ!!」と反論してくる。クレームは改善のチャンス、という意識はみじんも感じられず、いかに批判を受け流したり、あるいは上手に反論するかに命をかけているかに見える。



<Defensive>

空港の入国審査ゲートとか、いろいろなところに We will not tolerate abuse みたいな張り紙がしてある。tolerateは「許容する」、abuseは「侮辱、ののしり, 悪態, 暴言」といった意味だ。つまり「ことばの暴力」のような意味だが、abuseにはphysical abuse、つまり肉体的な暴力も含まれる概念だ。
いろんなところにペタペタと貼ってある We will not telerate abuse は要するに、怒った乗客が職員に対し罵詈雑言をはいたり、ときには肉体的な暴力をふるうことを事前に阻止する狙いがあるのだろう。腹を立てた利用客が職員をAbuseすることは許されませんよ、ということ。確かに攻撃的な客もいるのだろう。職員もかわいそうだ。

もちろんAbuseはいけないが、でも、相当強い不満があるからついつい攻撃的になってしまうわけだ。それだけ傷ついている、それだけ怒っている、ということだ。攻撃的な客を責めるのもいいが、まずは自分たちの非を認め、客をそこまで怒らせないための対策を考えるべきではないか。



<組織への帰属意識の無さ → 自分の責任の範囲外>
例えばブリティッシュ・エアウェイズのシステムトラブルで大量のキャンセルが出たとき、「すみません、ウチのIT部門がヘマをしまして・・・」とは絶対にならない。そんなこと言わないし、全然思っていない。むしろ、オレたちだって被害者だ!ぐらいに思っている(笑)。「本当だったら、もうとっくにパブに行けていたはずの時間なんだ。それなのに。。。オレだって困ってるのに、そんなオレに文句を言うとは何ごとか!」ぐらいに思っている。
上記「言い訳/逆ギレ」の項目とも関連。

同じ組織だから連帯責任だ、という意識は皆無。手は、足がやったことに責任を感じない。サッカーのイングランド戦とか、地元のFootballクラブの試合では「組織の一員」としてあんなに燃えるのに(笑)、なぜ仕事においては組織/チームへの帰属意識を感じないんだろう。

そして興味深いのが、「それは自分の責任の範囲外だ」というのであれば、じゃあ、自分の責任の範囲内のことは責任をもってしっかりやるのかと言えば、意外とそうでもないからタチが悪い(笑)。



<他人事>
以前、アムステルダムからロンドン(ヒースロー空港)に向かうフライトが出発直前になってキャンセルになり、その1時間後の、かつ予定されていたヒースロー空港ではなくロンドン・シティ空港行きに振り替わったときがあった。多くの乗客がフライト・キャンセルの影響を受けていたこともあり、乗った機内のアナウンスで、CAさんがそれについて一言言ってくれた。それはいいのでが、その内容がWe are sorry to hear that your flight has been cancelled、つまり「フライトがキャンセルになって残念でしたね、大変でしたね」みたいな内容。ここでの”We are sorry”は「ごめんなさい」ではなく「ご愁傷様」に近い意味で、謝罪ではなく同情の“Sorry”だ。つまり、「ウチの会社(この場合はKLM社)がご迷惑をお掛けしてすみません」とは思わないのだ。だから、悪びれもせず、謝りもしないのだ。

労働者意識なんですかね。自分はしがない一労働者で、「会社」とはまったく別物です、と思っているような印象を受けます。




<We are doing our best。 仕組み化しよう、という発想の欠如
その場しのぎの対症療法短期志向なのだ。喉元過ぎれば熱さを忘れる、なのだ。

今、自分にできることは何か。それを考えるのはすばらしいが、それだけではいけない。再発を防ぐには、仕組みから変えることが必要だ。でも、仕組みの問題点を指摘しても、「今それを言ってもしょうがないでしょ、今は目の前の問題に集中しましょうよ」と、一見もっともなことを言ってくる。「今はとりあえず目の前の問題に対処して、来週のスタッフミーティングで今後の対応策を考えよう」とはならないのだ。「目の前の問題に対処して、定時になったら近くのパブに行こうとしか考えないのだ。




<There is nothing we can do>

無常感ですよね。
村上春樹さんが、自身の作品の授賞式で行ったスピーチで、日本人は無常と共に生きている、といった話をしています。確かにそうだな、と思うわけですが、イギリス人だって無常感がハンパない。これは There's nothing I can do を繰り返す職員サイドもそうだし、それを受け「ま、しゃないか・・」とあきらめる乗客サイドもそうです。

職員の、「システム上、今の自分に出来ることは何も無いのだ」という姿勢。これで完全にDoneです。完全なる思考停止。他に何かすべきことがあるなんて思いもよらない。前の項目とも関連するが、「翌週のスタッフ・ミーティングで、、、」とはならない。スタッフ・ミーティングなんてやっていないんじゃないか(笑)、そもそも。

確かに「今出来ること」は限られているのかもしれないけど。だったら、今はもういいから、明日以降、根本的な対応を考えましょうよ、そうしないとまたこういうことが起きますよ、と言いたいのだが、言っても伝わらないだろう。




<We value your feedback。 ご意見をお寄せください>
これはもう笑っちゃうしかないのだが、こっちの提言・意見・不満に対し全力で逆ギレをしたくせに、 We value your feedback(ご意見をお寄せください) などとしおらしく言ってくる。トラブル続出のくせにアンケートを強要してくる(笑)。こちらからすると、(いやいやいや(苦笑))という話だ。「フィードバックくれ」って言うけど、さっき駅で「フィードバック」を駅員に伝えたら、逆ギレ・言い訳・責任転嫁のオンパレードだったじゃないか。それが今さら「フィードバックしろ」なんて、一体どの面下げて・・・、っていう話です(笑)。

これ、思うんですけど、恐らくシステム上は「乗客のフィードバックを吸い上げる仕組み」というのは組み込まれているんだろうと思うんですよ。会社の方針としてはそういうタテマエになっているし、きっとそういう部門もあるんだろうし、マニュアルももしかしたらあるのかもしれない。問題は、その仕組みが個人レベルで全く機能していない、という点です。

一方日本の場合、会社のタテマエ的な仕組みが、個人のレベルでもある程度機能している。シンクロしてるんですね。それが大きな違い。




以上、トラブル時の乗客からの不満の声に関する、職員側の逆ギレ集から抽出できる職員らのメンタリティーについて考えて来た。

本連載もそろそろまとめに入る。

<明日以降に続く>

by dantanno | 2018-07-02 22:52 | 提言・発明 | Comments(0)