たんのだんのブログ

irisjapan.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

「都心に注力します!」について

昔、不動産系の仕事をしていたこともあって、不動産系の人たちと話すことが多い。

デベロッパーやリートの人たちと話していると、みんな

「地方ではなく、(人口の流入が続く)都市部に注力する」

とおっしゃる。

実際、各社のウェブサイトやIR資料を見れば、みな「都市部都市部」と言っています。

要するに、地方は今後人口が減少するし、将来性が乏しいし、(不動産の)流動性も低いので、リスクが高い。
一方東京、そしてまあ大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台などの都市部は、人口の流入もしばらく続くし、流動性も高く魅力的、というような趣旨です。



d0237270_02181125.jpg



不動産関係者がみな一様に口にする「都市部に注力する!」についての考察。



・一理ある。特に需要サイドを考えると。

以下↓で多少批判的というか、ネガティブ目な項目もありますが、基本的には「都市部に注力する!」というのはいい戦略なんだろうな、と思います。特に、需要サイド、つまり人口、経済活動、そういったものが都市部に集中するのであれば、不動産会社としても当然その波に乗って都市部に注力するのはまともな戦略だと思います。
言い換えると、不動産会社たちの「都市部に注力する!」というフレーズを聞いていて全くサプライズが無いのは、世の中全体がその方向に向かっていて、もはやそれがコンセンサスになっているから、というのもあると思います。

・全員が同じことを言っている状態って、何かおかしいのではないか

僕が偏屈だからなだけかもしれませんが、みんなが同じ方向を見て、全く同じことを言っている状況に多少の気味悪さを覚えます。大丈夫かな、、と。

不動産ビジネスというのは、それが不動産投資の場合はもちろん、賃貸業であっても、かなり「投資」的な側面がある。だから、不動産デベロッパーもリートも、どちらも「投資家」的な側面を強く有している。

その「投資家」たちが、みな一斉に「都市部に(投資を)注力する」と言っている。全員そう言っている。「いや、ウチは都市部ではなく地方に投資します」と言っている人は一人も、一社もない。

本来、投資で儲けようと思ったら、みんなが「こう」と言っているときにあえてその逆を行く、そうした逆張り(Contrarian)をする必要がある。実際、リーマンショックの直後、不動産価格が暴落し、不動産株が下がったときに買った人たちはすごいリターンを出している。一方、みんなと同じことを言い、同じことをするのが僕みたいなシロウト投資家で、そうするとえてして「高値づかみの安売り」をしてしまいがち。それが投資のセオリーだと思う。

では、今の不動産業界の「都市部都市部」というトレンドについてはどう考えればいいのか。みんながそう言っているから、あえてその逆を行くべきなのか。あるいは、みんながそう言っているから、実際に都市部の魅力が高まる(高まってしまう?)ので、結果的に都市部に賭けるのが正解なのか。そして、日本の「地方」は本当にそんなにダメなのか(不動産の投資対象として)。

この後プライシングについて考察しますが、
みなが都市部に注力すれば、当然その分都市部の不動産の価格は上がり、地方の不動産価格は下がる。みなが「都市部」と言わなくなるまで、その価格の調整は続く。そしてどこかのタイミングで「あれ?地方の方が(魅力度合いに応じた価格調整後も)安い!」というタイミングが来るはず。



・都市部の魅力は価格に織り込まれているはず?

都市部の方がいろいろな意味で魅力的。それはまあ分かります。でも、当然その分価格も高いわけですよね。
「高級品の方が低級品よりも「いい」んだ!」って、確かにそれはそうかもしれませんが、でも高級品の方が低級品よりも価格が高いわけで、それとの見合いで考えないと一概に「いい!」とは言えないですよね。例えばエルメスのバッグがすばらしいのは分かるけど、その素晴らしさが例えば100だとして、一方価格が100万円だとしたら、(価格調整後の)実質的な価値は100/100=1です。
それに対し、1万円で売られているバッグに2の価値があるとしたら、価値の絶対量はヘルメス100 VS 安いバッグ2とボロ負けですが、価格で調整してみると、実は安いバッグの方が2÷1=2と、エルメス様の倍の「実質価値」がある、と言えます。

不動産もそれと同じではないか、と思うんです。
みんなが「都市部がいい!」と言っている今、それが正しく価格に反映されていれば、都市部の価格がつり上がり(実際つり上がっています)、「魅力度合い調整後のプライス」は地方と均衡するはずですよね。

今「都市部都市部」と言っている人たちは、当然そういうことは分かった上で「都市部」と言っているわけです。ということは、都市部と地方の「魅力 対 価格」の調整はまだ均衡点に達しておらず、都市部に投資することでアービトラージをし、メリットを享受出来る、と考えているわけですよね。

・都市部と地方のミスプライスを定量化出来ないものか

都市部の魅力が正しく価格に反映されていない、織り込まれていない。
仮にそうなのであれば、それを反映させるとどうなるのか、に興味があります。現在存在するミスプライスをなんとか定量化出来ないものかなあと思います。それはもちろん主観的な計算になるでしょうが、それでも興味がある。

例えば、オフィスでも商業施設でも住宅でもなんでもいいんですが、全く同じ物件が、地方であれば10億円、都市部であれば15億円の市場価格を付けられているとします。その場合、(表面上の)「都市部プレミアム」は50%ということですよね。
全く同じ物件が、地方であれば(都市部と比べて)かなり安く買えるわけで、そこだけを見れば「地方の方が投資先として魅力的」となる。でも、実際には都市部の方がいろいろな意味で「魅力的」であり、50%もある都市部プレミアムを払ってでも都市部に投資をしたい、そう言う人が多い、ということですよね。

であれば、都市部のその「魅力」をなんとか定量化し、
「表面の価格だけを見れば地方の方が当然安いですが、ほら、魅力を考えると、むしろ都市部の方が「安い」んです」
という説明を聞いてみたいし、それを訳してみたい。

・全員が同じことを言っている状態って、何かしら「チャンス」ということではないんだろうか

僕は投資家ではないし、自分の資産もちゃんと運用していないのでエラそうなことは全く言えませんが、いい投資って要するに、全員が同じことを言っているときに、あえてその逆を行く(逆張り、Contrarian)のが基本だと思うんですよね、多分。そう考えると、全員が全員「都市部に注力する!」と言っている現在、その逆を行くのはもしかしたらおもしろいんじゃないか、と思うし、1社ぐらいはそういうことを言う会社がいてもいいのではないか、と思います。「都市部ではなく、日本の「地方」に注力します!」というフレーズを訳したくてウズウズしています。


d0237270_02194175.png



実際、みんなが都市部に注目している今、地方ではいろいろなチャンスが生まれているはずです。そこにうまく目を付け、マネタイズする企業も登場するでしょう。僕がIRで同行している会社は、デベロッパーであれリートであれ、みな上場企業であり、スケールやリスクなどを考えるとなかなか地方にベットすることは出来ないのかもしれませんが、中小のプレーヤーがそれをやってくれることを期待しています。いや、僕が知らないだけで、既にいろいろと行われているでしょう。

・「地方」という言い方について

これはうまく説明出来ないんですが、(もっといい言い方があるんじゃないかなあ・・・)と思うときがあります。

ある友人が、「インバウンドということばが好きではない」と言っていました。外国から日本にやってくる人たちをひとまとめに「インバウンド」と呼ぶのはなんだか失礼だし、違和感を感じる、とのこと。

最初は(ふーん、そんなものかなあ・・)ぐらいにしか思いませんでしたが、その後だんだん(うん、なんか分かる。確かにそうだ!)と思うようになりました。それ以降もIRミーティングで「インバウンド」ということばを100万回ぐらい訳していますが、いや、正確には"inbound"と言い換えているだけなので訳してはいないのかもしれませんが(笑)、それを言う度に多少の健全な違和感を感じるようになりました、その友人のおかげで。

それと同じような違和感を、「地方」ということばにちょっと感じています。「都市部ではない」という意味で確かに「地方」なんですが、日本の「地方」がいかに素晴らしいかを知っているだけに、なんかこう、もっといい言い方が無いものかなあ、きっとあるような気がするんだけどなあ、と思ったりします。まあ、これは確とした意見ではないですし、代替案があるわけでもないので、単なるぼやきですが、そういうことを感じたりもします。

ーーー

以上、「都市部に注力する!」について感じていることをまとめてみました。お読みいただきありがとうございます。

by dantanno | 2018-05-30 02:20 | IR通訳 | Comments(0)