当面、謙遜を禁ず!
2013年 02月 24日
とある日の通訳の仕事を終え、
本番のほてりを冷ますかのように会場でボーッとしてたら、
通りかかった参加者の方から
「よかったよ、通訳」
的なお褒めの言葉をかけられました。
D (初めて褒められた!)
と舞い上がる気持ちを抑え、
D 「いえ、そんな。 私の通訳なんて全くダメで・・・」
的な謙遜を、ヘラヘラ笑いながら返しました。
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その後、数日経ちました。
あのときの
「私の通訳なんて全くダメ・・・」
的な言葉がずっと引っかかります。
引っかかった理由は主に3つ:
1. 「通訳」を汚す感じ
当時、10年間のサラリーマン生活から転じて、通訳者の道を志すと決めた時期でした。
これから生きていく道として選んだ「通訳」というものを、他ならぬ自分が汚してる感じ。。
実は、自分の通訳を悪く言ってるだけだから、別にいいはずなんだけどね。
当時はなんかそう思いました。
2. クライアントはどう思うか
僕がそのとき話してた相手は一参加者の方でしたが、もし
「いやー僕の通訳なんて全然ダメダメのグダグダですよ、ハハハ・・・」
と僕が言うのを、お金を払ってくれているクライアントが聞いたら、果たしてどう思うか。
「だとしたら、なんでそんな代物に高いカネ払わなきゃいけないんだよ!」
って思わないか。
3. 自分の「ヘタな通訳」のための逃げ道を用意してる?
「自分はヘタだ」と周囲にへりくだることにより、本当にヘタであることを正当化(Justify)してるような気がしました。
「自分は通訳がとっても上手です♪」と言いながら現場入りし、ほんでもって通訳がメタメタなのより、
「自分の通訳はダメダメです!」と言っておいた方が、実際ヘタだったときにダメージが少ないでしょ?
そうやって、自分のダメ通訳のための素地というか、土台を自分で作ってるのをつくづくイヤに思いました。
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で、どうするか。
まず考えたのは、オレは、
1. 本当に自分の通訳がヘタだと思っているのか、あるいは
2. 思ってもいない謙遜を口にしているだけなのか。
仮に2.であれば、まあどうでもいいかって話なんだけど、
明らかに、間違いなく1.です。
であれば、
「僕はヘタです、フフフ♪」
なんて言ってないで、一刻も早く上達するよう、出来ることを全てやろう、と思いました。
(その後、その決意をずっと維持出来たとは思いませんが、少なくともこの時点ではそう思いました(笑)。)
そして、ヘタな通訳への逃げ道を塞ぐため、設定した自主ルールが
当面、謙遜を禁ず!
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その後は、どこかの現場でちょっと褒め言葉めいたものをかけられても、
あまりうれしそうにするでもなく、謙遜するでもなく、
「はあ・・・ モゴモゴ・・・」
みたいな中途半端な対応を続け、通訳ではなく人格がヘンなヤツだと思われたことでしょう。。。
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この「謙遜しない」はあくまでも僕用の自主ルールですが、
自分以外で唯一謙遜が若干気になるのは、今教えている神戸女学院の学生たちが発する謙遜です。
みな大和撫子ですから、ことあるごとに
「私の通訳なんて・・・」
みたいなことを言いますが、
D 「だったら、一刻も早く上達せよ」
と、心の中でエールを送らずにはいられません。
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さて、僕の「謙遜しない」ですが、それをいつまで続ける、みたいな期限はあるのでしょうか。
一応考えているのは、
自分が自他共に認める「一流の通訳者」になって、
それでもまだ向上の余地がたくさんあると思えたら、
「いや、私の通訳なんてまだまだ・・・」
と言ってみようと思っています。
果たして、それを口に出来るのはいつの日か・・・