訳す前の「原文整理」
2013年 01月 21日
1. (話し手が)言った通りに訳す
2. 要点から順に訳す
3. ロジックの流れが分かりやすいように訳す(起承転結、みたいな感じ)
例えば、
Q "How much profit are you expecting this year?"
という質問に対する、
A 「今年は**の影響で、売上が伸びることが予想されます。
それを踏まえると、利益についてもかなりの伸びが期待出来ると思います。
あと、コスト削減を継続している、というのも効いてくるでしょう。」
という回答をどう料理するか。
以下、訳してないけど、訳す前段階の「原文整理」のオプションをいくつかご賞味ください。
1. (話し手が)言った通りに訳す
「今年は**の影響で、売上が伸びることが予想されます。
それを踏まえると、利益についてもかなりの伸びが期待出来ると思います。
あと、コスト削減を継続している、というのも効いてくるでしょう。」
そのままです。
2. 要点(聞かれていること)から順に訳す
「今年の利益については、かなりの伸びが期待出来ると思います。
その理由としては、
1.**の影響で、売上が伸びること、そして
2.コスト削減を継続している、という点があります。」
箇条書きにするあたりが外資系コンサル風でしょうか。違うか。
これはよくやってます、僕は。
特に日→英の際。
逆に、英→日に訳すときは、意図的に結論を後ろにずらすこともあります。
3. ロジックの流れが分かりやすいように訳す(起承転結、みたいな感じ)
「今年は**の影響で、売上が伸びることが予想されます。
また、コスト削減を継続している、というのもあり、
利益については、かなりの伸びが期待出来ると思います。」
話し手があとから思いついて付け足した感がある「コスト削減」の話を前に持ってくることにより、言ってることを変えずにちょっとだけ分かりやすく(当社比)したつもり。
みなさんはどれが好きですか?
どの原文整理方法(すなわち訳し方)がベストかは、ケースバイケース。
ケースバイケースと言いつつ、各「ケース」において正解は無いから、ケースバイケースですらないのかもしれない。
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「通訳者は、話し手の言っていることを変えて訳してはいけない」
を隠れ蓑に、原文整理という付加価値提供を頑なに避け続ける通訳者もいます。
「話し手の言っていることを変えてはいけない」
には僕も100%Agreeだけど、
話の順番を変えるのは、必ずしも「話し手の言っていること」を変えたことにはならない。
むしろ、結論の位置が異なることが多い言語(例えば日・英)間で通訳をする場合、結論の位置操作は訳の一部
だと思うし、
話し手の言っていることを変えない中で、様々な訳のバリエーションがあり得る
と思うし、
そうした各種バリエーションを比較検討した上でベストの訳を選ぶべき。
どんな簡単なフレーズの訳であっても、少なくとも2つ以上のオプションを比較検討した上で訳を開始すべき。
翻訳者が時間をかけてじっくりやってることを、我々通訳者は瞬時にやるべき
だと思う。
(ダメだ、通訳の話になると、どうしてもアツくなる・・・)
興味深いのは、
要点から最初に訳せばいいとは限らない
だと共感を得やすいのに、
話し手の言った通りの順番で訳せばいいとは限らない
だと、あんまそうでもない、ってこと。
「原文順序頑なに維持派」 VS 「原文整理派」。
どっちの考え方が正しいかは、クライアントからの指名の数が自ずと証明するでしょう。