なんとも分かりにくいタイトルで恐縮です。
通訳者になりたての頃、
「通訳者たちの意識を変えていかなきゃ!」
という、おこがましくかつお節介な思いにとらわれていました。
それまで10年サラリーマンをしていた自分が通訳者になり、いろんな通訳者と話をしたり業界の慣習を知るにつれ、「え??」と思うことが多かったんです。そしてそれを自分が変えていかなきゃ、と思ったんです。
みんなの意識を変えたいテーマはいくらでもありました。
通訳者とエージェントの関係について
予習について
キャンセル料について
通訳トレーニングについて
案件の「仮」と「確定」について
翻訳をやるかやらないか
クライアントとの関係について
クライアントとの直接取引について
同時通訳を何分続けるか、について
通訳報酬/レートについて
案件の受け方・入れ方について
などなど。
もちろん最終的には「人それぞれ」でいいし、各人の意思を尊重すべきです。
でも、通訳学校で教わったことをそのまま盲目的に信じこんでいるケースもあると思うし、業界で(今までなんとなくこうしてきたから・・)というだけの理由で続いている古い慣習もあると思うんです。あると思うんですっていうか、あるんです(笑)。その辺に気付いてほしかった。
意識を変えたらもっと自由で楽しくなるのに!もっと稼げるのに!もったいない!!と思いました。
そうしたテーマについて通訳者たちと話し合いをするんですが、ほぼ決まって「僕 VS その他全員」という構図になりました。
なかなか分かり合えません。なんだかHostileな雰囲気になってしまったことも何度かありました。
意識を変えようとしても相手の意識はなかなか変わらず、一方で「なんだかめんどくさいことをグジャグジャ言っている人」みたいなイメージを持たれる、という逆効果を当時感じました。双方にとって無意味どころかむしろ有害だな、と。
その後年月がたちました。
今では、通訳者たちの意識を変えよう、変えなきゃ、みたいなヘンな気持ちはありません。
変わらない人は言っても変わらないし、変わる人は言わなくても変わる。
そう、変わる人は勝手に変わるんですよね、当たり前ですが。
実際、自分の周りで、少数ではありますが、意識や考え方が年月とともに明らかに変わった人が何人かいます。
最近は、むしろ「変わらないでくれ・・」と思うようにもなりました。
みんなの意識が変わってしまうと、私自身の特徴が無くなってしまうので。これはちょっといやらしい考え方かもしれませんが、でも競争ですから、その中で自分のエッジを効かせることも大事なことだな、と思うようになりました。
ちなみに、じゃあお前の考え方は一体なんなのか?と問われたら。。。
各テーマ毎にいろいろとありますが、それを乱暴に一纏めにして言うと、
・クライアントやエージェントになめられたりイヤな扱いを受けても怒らない。間違ってもSNS等でグチったりしない。
・弱いのは自分のせい。実力不足が原因。強くなれば立場が逆転する
・基本的な通訳力を上げるために出来ることをすべてやる
・通訳者は通訳エージェントの下請けではなく、通訳者が主体的にクライアントとビジネスを行う。エージェントはそれを側面支援。
・通訳料金は通訳者のもの
・エージェントが、クライアントの支払額を通訳者から隠したり、直接取引を禁じたりするのは完全なモラル違反
・通訳はサービス業なので、クライアントに対し高いフレキシビリティーを発揮する(それを可能にする実力が必要)。
・通訳者の高い実力とフレキシビリティーを両方反映したプレミアムなプライシングを獲得・実現する
といったところです。
今でも、通訳者と各種テーマについてあれこれディスカッションするのはとても楽しく、有意義なことだと思っています。
ただ、相手の意識や考え方が自分と大きく異なっていてもわざわざそれを変えようとはせず、
むしろ、(自分には無い新鮮な視点だなぁ)と思えるようになって来ました。いいことです。