たんのだんのブログ

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ブリストルに日帰り旅行

ロンドンで、通訳案件の合間の週末、丸一日自由になる日がありました。

せっかくだからどこかに行ってみようかな、、、
とイギリスの地図を眺め、テキトーにブリストル(Bristol)という街を選んでみました。

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海の近くの、川沿いの街。

行き方を調べてみると、ロンドン都心のパディントン駅から結構ひんぱんに電車が出ています。所要時間は1時間半ぐらい。ちょうどいい感じです。
このときはヒースロー空港隣接のホテルに滞在していたんですが、調べてみると、空港からブリストルへの長距離バスも出ているようです。こっちは2時間ぐらいかかります。イギリスの電車はとてもステキなので惹かれるんですが、空港からいったんパディントン駅まで行って、そこからまた電車に乗ることを考えると、現在地である空港から直接行けちゃうのは魅力的で、結局バスで行ってみることにしました。

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バスにゆらゆらと揺られながら、(ブリストルって、ちょっと遠すぎたかな??)と後悔し始めました。せっかくの休日なのに、往復4時間もかけて見知らぬ街までいくのは果たしてどうなのか。しかも、何か目的があってその街に行くわけでもなし、結局ちょっとブラブラ歩いてカフェ入って新聞読んで、最後はパブでビールひっかけてロンドンに戻るんだろうから、だったらロンドンから45分圏内とか、もうちょっと近場の街でもよかったんじゃないか、と思い始めました。でもまあしょうがない。

ーーー

ブリストルに着きました。長距離バスの発着所となるバスターミナル(Coach Station)は、街の北東側にあって、そこから中心部まで歩くことに。
とことこ歩き始めますが、なんだかロンドンと雰囲気が違う。。

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こ、こわい感じ?
治安が悪いというか、なんだか殺伐としています。酔っ払いらしき人たちとか、とても貧しそうな人たちとか、その複合型の人たちとかウロウロしています。

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バスの中で感じた後悔が再燃し始めます。
ああ、せっかくの安息日、往復4時間かけて、僕はこんな街に来てしまったのか。。。
まあでも、ロンドンとそれ以外の都市との格差というか、違いを肌で感じられたのはよかった。この前のBrexitだって、結局ロンドン(とスコットランド) VS それ以外のエリア、みたいな展開だったじゃないか。その背景を理解するのは大事なことだから、まあこれでよかったんだ。。。みたいに自分に言い聞かせながら、とりあえず街の向こう側にあるウォーターフロント的なエリアを目指してみます。


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着いてみると、なかなかステキじゃないですか。
水際の遊歩道を囲むように飲食店が並び、古本や雑貨、お菓子やケーキなどを売る出店も多く出店しています。結構賑わっています。



戦利品の古本。自分とさち用。

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思うんですけど、こうしたウォーターフロント/水辺って、人間を引きつける力がなにかあるんですかね。お台場もそうだし、あとどこだっけ、ベニスとか、小樽とかもそうだし、いろんなところがそうですよね。東京都心の日本橋のあたりとかも、もっともっとステキになるポテンシャルがあると思います。

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ブリストルの、このウォーターフロント地区で商売をしているおじいさんとちょっと話す機会がありました。

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Dan 「さっき、バスターミナルに着いたんですけど、あの辺は結構荒れてる感じで、最初エッって思ったんですよね。でも、こっちのウォーターフロント・エリアはすごくステキですね。」
Ojiisan 「そうね。でも、昔はこの辺も結構荒れてたんだよ。昔は港がこの辺にあったんだ。今はもっと河口の、海の近くまで移動したけどね。で、船乗りたち相手の、かなりガラの悪い飲み屋がたくさんあって、雰囲気が悪かったんだ。でも今はだいぶよくなった。」

とのこと。



まるで生きているかのようにリアルなフクロウ。
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港が河口の方に移動したおかげで雰囲気がよくなったのか、あるいは港が移動してしまったから廃れたものの、その後持ち直したのか、いまいちよく分かりませんでしたが、とにかくそんな話でした。



今では結構ハイエンドっぽい住宅もあって、かなりステキな雰囲気です。


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そんな一角で昼食をとりました。
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表にバイクとかが置いてある、カッコイイ店。
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この街ではサイダー(Cider)が人気のようです。我々にとって「サイダー」といえば三ツ矢サイダー(大好き)ですが、こっちのサイダーはビールと酎ハイの中間みたいな、これまたスッキリとおいしいお酒です。

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ウォーターフロントで見つけた小さな文化施設(?)のようなものに立ち寄ってみました。映画館を中心に、いろいろな文化的な取り組みをしているようです。カフェもあります。
ちょうどこの日は短編映画際をやっていたので、ロンドンに戻るバスにギリギリ間に合う16:30からの回のチケットを買って、再び街に出ました。



左に行くべきか

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右に行くベきか。

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ウォーターフロントを少し離れ、街中を通りつつ、丘の上の公園を目指します。

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このように、石垣の中からがんばって生えている植木がすごく好き。

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かわいい門たち。

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街中で、ある画廊の前を通りかかりました。

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絵とかあんまり興味ありません。
この前なんか、同行しているお客さんが行きたいって言うからみんなでロンドンのNational Galleryに行って、そこで1時間ぐらい自由行動になったんですけど、あまりにも興味が無いので近くの文房具屋に行って、ノートとかペンとかホッチキスとかを眺めながら1時間を過ごしたぐらい。

そんな僕ですが、この画廊に展示してあった1枚の絵が目に止まり、なんだかちょっと気になりました。でもそのまま通り過ぎようと思ったんですが、なんだかどうしても気になります。そこで、せっかくだからフラッと画廊に入ってみることにしました。

とってもやさしそうなおじさん(写真撮ればよかった)がやっている画廊でした。
「この人の絵がすごく気になるんです」と告げると、「だよね〜、いいよね〜」と言いつつ、その画家の他の作品をいくつか奥から持ってきてくれました。静物画と風景画があったんですが、僕は断然静物画の方が好きでした。

中でもこの絵が一番気になりました。


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ものすごくほしい。どうしてもほしい。

そこそこいい値段なので、「ちょっと考える」とおじさんに告げて、"I hope you'll come back"と見送られつつ、丘の上の公園へ。

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シャンプーハットのようなベンチで思案すること30分。

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もう、心の中では買うことを決めてるんですよね。
でも、最後の最後の確認、みたいなこういう時間って結構好きです。そんなにほしいんだな(笑)、ってことを確認する時間。

画廊に戻り、やっぱりどうしてもほしいことを告げ、購入。画廊のおじさん曰く
「ほら、単に『家に何か飾りたいから』ってだけで買う人もいるでしょう。それと比べたら、本当にこの絵を好きで買ってもらう方が断然うれしい」
と言ってくれました。

ーーー

16:30になったので、さっきのウォーターフロントの映画館に戻り、映画を鑑賞。リトアニアの短編映画6作品の上映でした。冒頭、本件の企画者であろうリトアニア人の女性の挨拶などもあり、それっぽい雰囲気に。映画は、短いものは6分(!)、長いもので30分。コメディタッチのものからドキュメンタリー、アニメなど、幅広い6つのセレクションで、リトアニアのシュールな雰囲気を楽しめました。

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映画が終わり、ちょっと急ぎ目でバスに戻ります。予定通り18:30に、ロンドンに向け出発。

ーーー

バスの中で、僕の隣の席に置かれた、大事に包まれた絵を見やりながら、なんだかとても温かい気持ちになりました。
生まれて初めて「絵」というものを買ってみました。ステキなものを買った、という満足感に加え、あの画廊のおじさん、そして絵を描いた画家との結びつきが生まれたような気がして、自分もわずかながら「芸術」の世界に携わっているような、錯覚なのかもしれないけど、そんな満足感を覚えながら家路につきました。

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by dantanno | 2016-09-25 21:51 | グローバルに生きる | Comments(2)

"Have a nice trip!"をどう訳すか

この前、ある日本企業のIRにお供して、その企業の方々とアメリカの投資家たちを訪問したときのこと。

わざわざ訪問するぐらいですから、基本的にFace to faceのミーティングなわけですが、今日の記事で取り上げるそのミーティングは電話会議形式で行われました。

例えばアメリカへのIR出張であれば、ニューヨークとかサンフランシスコとかシカゴとか、外国人投資家たちがたくさんいる街に行って、各地の投資家と面談します。でも、中にはデンバーとかデモインとか、結構マニアックな場所に本拠地を置いている投資家もいて、そういう投資家とは(こちらからアメリカに出張してきているにもかかわらず)電話会議をすることもあります。証券会社の現地オフィスや、宿泊先ホテルの会議室から。

今日の記事も、そうした「海外IR出張中の電話会議」が舞台です。

ーーー

ミーティングの冒頭、電話の向こうから、投資家が
"Well, thank you very much for taking the call. I hope you've been having a good trip so far."
みたいなことを言いました。

IRミーティングの冒頭の挨拶(投資家側、および企業側)については、状況によって訳したり訳さなかったりしています、僕の場合。"Thank you very much for meeting me"とかだったら、日本企業の方々も分かるかな、と思ってあえて訳さないこともあるし。冒頭の型どおりの挨拶は、重要性がそれほど高くないこともあるし。また、冒頭の挨拶ぐらいは自分でやりたい、という日本企業の方もいると思うからです。

で、問題の電話会議のときは、雰囲気的に(一応、訳した方がいいかな)と思ったので、訳すことにしました。

さて。
"Well, thank you very much for taking the call. I hope you've been having a good trip so far."
を、どう料理するか。

ーーー

投資家のこの発言の、前半部分は結構簡単というか、Straightforwardだと思うんですよね。
直訳すれば、例えば「この電話会議を受けていただき、どうもありがとうございます。」みたいな感じでしょうか。
意訳すれば、例えば「今日はお時間をいただき、どうもありがとうございます。」みたいな感じでいいと思うんですよね。

問題は、発言の後半の "I hope you've been having a good trip so far."の部分です。

ーーー

モロに直訳すれば、例えば「これまでのご出張が実り多きものであったことを願っています。」みたいな感じでしょうか。でもそれだと明らかにおかしいというか、ぎこちないじゃないですか。

で、結局どうしたかというと、思いっきり訳から落としました。つまり、投資家が
"Well, thank you very much for taking the call. I hope you've been having a good trip so far."
と言ったのを、
「今日はお時間をいただき、どうもありがとうございます。」
とだけ訳しました。

ーーー

訳を落とす際、、、つまり、発言者が言ったことを全て訳さずにある程度はしょって訳す際、決めているルールが一つあって、それは「訳せなかったから落としたわけではないよね?」と自分に問いかける、というルールです。意図的・戦略的に落としたのであればいいと思うんですよ。その方がいい訳になるとか、その方がその場がうまく収まると思ったとか、そういう理由であれば。一方、自分の実力不足・知識不足で落とさざるを得なかったのであれば、それはそれで問題だからなんとかしないといけないと感じます。

今回の、発言の後半部分の
"I hope you've been having a good trip so far."
ですが、これは訳さなくていい、と思ったんですよ。もっと言うと、訳さない方がいいと判断したんですよね。そのまま訳そうとすると、例えばさっき書いたように「これまでのご出張が実り多きものであったことを願っています。」みたいにぎこちなくなっちゃうから。

「これは訳さなくていい」という自分の判断にほぼ絶対の自信を感じつつ、残りのミーティングをまあ滞りなく進め、証券会社の会議室を後にし、ニューヨークの街に出ました。でも、その日その後のミーティングをこなしている間中ずっと、さっき訳さなかった"I hope you've been having a good trip so far."がなんだか引っかかります。気になります。

まったく意味の無い発言(例えば本題に入る前の「アー」とか「ウー」みたいな音とか)であれば、訳から落としても別に罪悪感を感じないんですよね。でも、今回投資家は"I hope you've been having a good trip so far."と発言することで、多分何かを伝えたいと思っていたはずで、それがなんなのか、そしてそれを自分は伝えなくてよかったのか、ずっと引っかかっていました。もし投資家が意図的にこの発言をしたのであれば、通訳者として、その気持ちを大事にし、ちゃんと訳に反映させてあげるべきだったと思い始めました。

じゃあ、仮に落とさずにちゃんと訳してあげた方がよかったとして、でも、だからといってこれまでのご出張が実り多きものであったことを願っています。という訳がいいとは思えない。訳から丸ごと落としてしまう自分を許すことは出来ないけど、一方でこれまでのご出張が実り多きものであったことを願っています。みたいな、そんなぎこちない、いかにも訳っぽい訳をすることを許すわけにもいかない。じゃあ、一体どうすれば良かったのか。ずっと考え続けました。

ーーー

こういう発言を訳す際に一番大事なのは、発言者の言葉尻にとらわれないことだと思うんですよね。一見(一聴?)訳しにくい発言だからこそ、そのまま訳してはいけない。だから、投資家が
"I hope you've been having a good trip so far."
と言ったとき、すぐに+自動的に
これまでのご出張が実り多きものであったことを願っています。
と置き換えてしまうのではなく、一歩引いて、「発言者である投資家の意図はなんなんだろう」というところから急がば回れをすればいいんだと思いました。

思うに、"I hope you've been having a good trip so far."という発言を通して投資家が伝えたかったメッセージは、「私はあなたがたの出張について慮って(おもんぱかって)いますよ、気にかけていますよ」ということだったのではないかと思いました。だからこそミーティングの冒頭でこういう発言をしたのではないか。それによって場の空気を和らげたい、という狙いもあったかもしれません。だとしたら、やっぱりそれは訳において大事に訳してあげた方がよかった。

訳から落としてしまうのではなく、一方これまでのご出張が実り多きものであったことを願っています。みたいに訳してしまうのでもない、第三の道を模索し続けること、結局それが「いい通訳」ということなのかな、と思います。で、今回の発言の場合、いろいろなことを総合的に判断して、

「今日はお時間をいただきありがとうございます。ご出張、お疲れさまです。」

みたいに訳せばよかったな、と感じました。人によって(特に「通訳者によって」)異論はあるかもしれませんが、少なくとも僕にとっては、上記が一番しっくり来る訳だったな、と今さら思いました。

ーーー

投資家は
"I hope you've been having a good trip so far."
と言いました。

これは、ニュアンス的にポジティブ/ネガティブどちらかと言えば、ポジティブだと思います。"good trip"という語がそれを表していると思います。

一方で、「今日はお時間をいただきありがとうございます。ご出張、お疲れさまです。」の「お疲れさまです」は、ネガティブと言うと言いすぎかもしれませんが、少なくともポジティブではないというか、どちらかというと「大変ですね」みたいなニュアンスを感じます。だからこそ、元ネタのポジティブさをこうしてちょっとネガティブに仕上げてしまうことに多少の抵抗も感じるわけですが、でもそれでいいと思うんですよね、英語→日本語の訳は。

"Have a good trip!!!"
も、
「よい旅を!」
と訳してもいいし、あるいは
「お気を付けて」
と訳してもいい。

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前者の訳は、元ネタのポジティブさをそのまま伝える、それはそれでいい訳だと思います。確かに直訳っぽいというか、いかにも「訳しました」的なぎこちなさは感じるものの、そういうニュアンスを含めて聞き手に伝えたいときもあるんですよね。素材感を強く出したい、というか。そういう場合、このようにちょっとそのまま感を残した訳がいいと思うときもあります。

一方後者は、元ネタで言わんとしていることはしっかりと伝えつつ、あえてちょっと「ネガティブ(?)」というか、コンサバ目に変換することで、絶妙に日本向けにローカライズさせた結果の、それはそれでとてもいい訳だと思います。

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どちらがいいかはケースバイケース。正解は無い世界ですが、訳してしまう(あるいは訳から落としてしまう)前に一度、頭の中で「これはどう訳すべきか」という、大袈裟に言えば訳の信念を問う、そういう瞬間を経た上での訳であることが絶対条件だと思うし、逆にそういうプロセスを経た上での訳であれば、例えそれがどのような訳であってもそれを尊重し、祝福するべきだと思います。


by dantanno | 2016-09-01 11:46 | 日々研鑽 | Comments(1)