たんのだんのブログ

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カテゴリ:次の次元に行くための半年間( 3 )

英語表現力以上のものを学ぶ

通訳者としての僕の、一番の課題は「英語表現力の不足」だと思う。
普段、IR通訳をしているときはそれほど感じないが、記者会見の通訳など、畑違いの通訳をすると、それを強く感じる。

四十を過ぎてサッカーをし、頭ではこう動きたいのにカラダがついて行かないもどかしさに似ている。もっとうまく訳せるはずなのは分かってるんだけど、口(から出る表現)がそれについて行かないもどかしさ。

そこで、表現力のエクササイズを始めることにした。
「今はまだ自分のモノになっていないけれど、モノにすると便利な表現」を求め、この本をひもといた。


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Brandon Stantonの"Humans of New York"のStories版。ウチの奥さんが大好きな本。債券トレーダーをやめた著者が、ニューヨークの街で見かけた人にインタビューし、写真を撮らせてもらったものをまとめた本。

こういう、なんだか微笑ましい話もあれば、


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なるほど、と、ちょっと考えさせられるものもある。


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これを読めば、アメリカのフツーの人のフツーの表現が身につくかな、と思ったんですよ。

「どの表現が勉強になるのか?」と問われれば、確かに明確に「これです」というのはあまり無い。が、この旋律というか、流れというか、そういうのがとても勉強になる。そして、それが実は「表現」なのかな、と思う。

表現力というと、一見例えば"drop"以外に"plummet"という言い方も身につけることにより、TPOに応じて使い分けられることを指すのかな、と思う。実際それも一理あると思うけれど、もっと深いレベルでの「表現力」は、そうした小手先の言葉の使い回しだけでなく、旋律めいたものをいかに自分のモノにして、自然に再現出来るか、だと思う。
この本の、どれか好きなページを一つ見つけ、それを一語一句覚えてしまうまで何度も読み返すことによって、そのことばの旋律を自分のモノに出来ると期待している。

そして、エクササイズをしながら、もっと大きな野望も浮かんできた。それは、そのインタビューをじっくり読むことで、そこで取り上げられている人の考え方までも吸収出来るのではないか、ということ。

ーーー

通訳において、表現力と並んで大事なのが「寛容さ」だと思う。

通訳をする際、「訳」そのもののプロセス以前に、発されたことば(素材)としっかりと向き合う、というプロセスがある。全ての出発点だ。その際、発言者の発言を聞いて、「これはきっとこういう意味だ!」と一面的に決めつけてしまうのではなく、「もしかしたら他の意味もあるかもしれない」という健全な疑いを持つこと。もっと言うと、あえてファジーな理解にとどめるという、一見遠回りが出来るかどうか。

発言を聞いたとき、回転の速い訳者ほど「A」という明確な形に解釈を瞬時に落とし込むだろう。自分も頭の調子がいいときほどそういう傾向があるが、それは実はもったいないことをしているのかもしれない、と不安になることがある。
訳者である自分は「A」と解釈したかもしれないが、発言者の心の中のイメージはきっと、、、というか絶対、「A」とぴったりイコールではない。A'であったり、A+であったり、A*だったりする。そうした’とか+とか*といった遊びの部分を瞬時にそぎ落とし、「A」という解釈に落とし込んで訳せば、確かに表面的にはキレイかもしれないし、何よりも、速い。速さは、通訳という仕事において大事な要素だ。そして、’とか+とか*といった要素が落ちてしまっていることを会場から指摘されることも少ない。通訳という仕事の性質上、我々の「お客様」となる発言者・聞き手はどちらか一方の言語しか出来ないことが多く、何かが落ちてしまっていてもそれに気付かないから。

でも、本当にそれでいいのか、と疑問に思うことがある。一見キレイに訳せてしまい、場がうまく収まり、会議参加者も満足して終わった会議のときほど、言いようのない罪悪感を感じることがある。それは、その会議の間中ずっと、無数の’や+や*を落としていることに、無意識ながらも気付いているからだと思う。そういうとき、商社時代の上司の小言を思い出す。

「丹埜はさあ、なんかこう、サーッとキレイにやっちゃおうとするんだよ。仕事ってのはな、違うんだよ、ぞうきん掛けなんだよ!だからさ、お前のやり方でいいからさ、丹埜's wayでいいからさ、もっと汚くやれよ。」

当時は意味がよく分からなかったけど、当時から(きっとそうなんだろうなあ・・・)と思った。そして、通訳においても自分にはそういう面があると思う。

ーーー

この本を読んでいると、当たり前だけど、実にいろんな人がいるんだなあ、と気付く。そして、全ての人が何らかのドラマを抱えていたり、今まさにそうしたドラマの渦中にあることに気付く。それはハッピーなものだったり、アンハッピーだったり、あるいはアンハッピーだったものが年を経てハッピーなもの、笑えるものになっていたりする。

我々通訳者が現場で対面する発言者も、そういう多くの人間の中の1人なんだから、その発言の裏にはいろいろなドラマがあり、その発言には無数の意味が含まれていることを認める、それが「いい通訳」への第一歩だと思う。もちろん、それを瞬時に訳さないといけない、という義務は変わらず残っているので、いつまでも「へー、いろんな解釈のし方があるなあ、深いなあ。。。」とお茶飲みながら味わっているわけにはいかず、瞬時に決断を下し、訳を開始しないといけない。でも、その訳出開始前のほんのほんの一瞬の間に無数の解釈候補を一度頭の中に並べてみること、そしてそれ以前に、そのような無数の解釈が存在しうる、、、っていうか、しうるどころか、存在する可能性が非常に高い、ということに気付くことが大事だと思う。

そういう意味で、英語の表現力以上の貴重な何かをこの本から得られると期待すると共に、通訳の勉強は結局人生の勉強につながっていることの好例が今回の表現力エクササイズだと思った。

by dantanno | 2015-12-27 11:25 | 次の次元に行くための半年間 | Comments(0)

ルービックキューブ

半年間で通訳を次の次元に持って行くために、まずやったことは、ルービックキューブを買うこと。

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子供の頃、遊んだ方も多いかもしれません。
元々は、ルービックさんという建築家が、彼の教え子に対する指導用に作ったツールだそうです。
BBC: ルービックさんがルービックキューブについて語る動画

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「通訳」と「ルービックキューブ」と、どういうつながりがあるのか?と思われるかもしれません。

野球は、カラダを使って行うスポーツです。だから野球選手は、日々の試合をこなすだけでなく、ストレッチ、筋トレ、ジョギングなどをして、カラダのコンディションを維持向上させています。
通訳は、脳を使う仕事です。だから、通訳者である僕は、日々の通訳案件をこなすだけでなく、***などをして、脳のコンディションを維持向上させます。

というだけの話です。

「***」にはいろいろなものが入るでしょう。
これまで、僕もいろいろなことをしています。算数の文章題、脳トレ(任天堂DS)、百ます計算、数独など。今回はルービックキューブに挑戦です。

元々は、さちのおもちゃを見におもちゃ屋に行ったとき、三角形のものを見かけたところから興味が湧きました。

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いろんなバージョンがあるんですね。

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ルービックキューブを使って鍛えようと思っているのは、

1. じっくり考える能力
2. 反射的に考える能力

という、一見相反する能力です。

まず、買ってきたばかりのキレイな状態をグチャグチャにし、そのグチャグチャになる過程を分析しようと思います。その上で、どうすれば元の状態に戻せるのか、その攻略法をじっくり考えます。

攻略法が思い付いたら、それに基づき、様々なシチュエーションにあるキューブを実際に攻略することで、2.の反射力を鍛えようと思っています。通訳に直接役立つのは、こちらの反射的な思考力ではないかと思っています。


スピーカーの話を聞きながら、様々な解釈の候補を思い付き、比べ、選択する力。
解釈を絞った上で、それをTarget languageで説明するためのピッタリな表現を脳内の引き出しから取ってくるスピード。
訳しながら聞き手の表情を観察し、それに基づき残りの訳を微調整する力、などなど。

また、上記攻略動画を見ていると、指を動かす速度や正確性も関係しているようですね。指を速く正確に動かすことで、間接的に脳を鍛えられそうで、一石二鳥かもしれません。

そうそう、一番上のルービックさんの動画に一瞬映るのですが、各面の一番真ん中の■だけ違う色になっている状態のものがありますね。そういう状態を作るゲームも楽しんでみようと思います。

ーーー

ある程度やって、もう大体分かったと思ったら、付属の攻略法を覗いてみて、自分が考えたものと同じなのか、あるいはより優れているのかを見てみようと思っています。

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Youtubeにもいろいろな動画が載っているようですから、それを観るのも楽しみです。

いい通訳は、実に奥が深い。

by dantanno | 2015-12-21 12:15 | 次の次元に行くための半年間 | Comments(0)

次の次元に行くための半年間

年内最後の出張から帰国したのがおととい、12月10日(木)。
次の仕事の予定は来年6月。
これから半年間、働きません。

人によるんだと思いますが僕の場合、日々忙しく働いていると、仕事以外の大事なことがおろそかになるんです。

・ 家族との時間
・ カラダの鍛練
・ 脳の鍛練(通訳においては特に重要)
・ 通訳トレーニング
・ 勉強・読書
・ 頭をカラッポにすること
・ ペンディング(つまり放置状態)になっている事務・雑用
 (順不同)

せっかく、半年に渡って仕事断ちをしてもその後なんとかなる仕組みがあるのなら、それを活かし、半年間仕事を入れないでみることにしました。

ーー

さて、そう意気込んではみたものの、出だしの12月11日(金)と12月12日(土)、さっそくなんとなくダラダラと過ごしてしまいました。

正確には、12/11はハードな出張の後ゆっくり休んで、12/12はさちとデートしたので、それはそれでとてもいい時間の過ごし方のはずなんです。でも、頭の中が整理されていない状態だと、(あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ)という後ろめたさがある中で「なんとなくダラダラ過ごしてしまった・・・」的な位置付けとなってしまい、実にもったいない。こういう状態から脱出することも、この半年間の大事な目標の一つです。

ーー

あ、一応、初日となる12/11はデスクの周りを掃除しました。まずは出発点として。

これも人によるんだと思いますが、デスクの周りがちらかっていると(つまり、僕にとってはほぼいつも・・・)、本当に目先の作業(例えば今晩締め切りの翻訳とか、明日中に役所に提出しないといけない書類とか)しか処理出来なくなってしまうんです、僕の場合。

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デスクをキレイにしたことで、まずは「よし、やろう!」というやる気が生まれたのと、頭が少しスッキリしたのを感じます。
まあ小さな第一歩ですね。

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あ、そうそう、初日にもう一つやったのが、IRIS通訳者数人と、大事な投資家と飲みに行くこと。
時差ボケのところ、たくさんたくさん飲み、2軒目で爆睡してしまいました。あ、夜眠くなるのは時差ボケとは言わないか。

ーー

半年の間に具体的に何をするかですが、大きな流れとしてはまず、
1. 頭の中を整理する
2. やらなきゃいけないことをやっつける → 「やりたいこと」だけが残っている状態にする。やりたいことは、概ね「遊び」と「自分を次の次元に持って行くための活動」に分けられる。
3. しっかり遊びつつ、
4. 自分を次の次元に持って行くための活動を行う。その際、インプットとアウトプットをバランスよく行う

4.の大事な柱となるのが「通訳トレーニング」です。
これは、大きく分けると①毎日のトレーニングと、②イベント的な取り組み(例えば半日かけて通訳に役立つ何かをやってみるとか、通訳者数人で集まってトレーニングしてみるとか)に分けられ、半年の間に両方やって行こうと思っています。

通訳トレーニングについては、駆け出しの通訳者はともかく、世の多くの通訳者が忙しい合間を縫ってなんとかちょっと出来たり、あるいは出来なかったりしているのではないかと思います。僕も、普段仕事をたくさん抱えている状態だとあまり出来ていません。
ですので、しっかりと時間を取って、「時間が無いから出来ない」という言い訳が出来ない状態に身を置くとどうなるのか、参考までにレポートしていこうと思います。インプットするだけでなく、その結果どうだったのかをブログに書いたりと、形に残す「アウトプット」も積極的にやってみます。

ブログでも、「次の次元に行くための半年間」という新しいカテゴリーを作ってみました。
ここにどんどんアップしていきます。

さてどうなることやら。結構楽しみです。。。

<半年間の、これまでの取り組み>
12月12日(土) 二日酔い。さちとデート
12月11日(金) 休養。デスクを掃除。投資家とIRIS通訳者たちと痛飲

by dantanno | 2015-12-12 23:59 | 次の次元に行くための半年間 | Comments(0)