たんのだんのブログ

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カテゴリ:ことば( 1 )

「備忘録的に」という表現について考える

ブログとか、Facebookでの意見表明的な長めの投稿とかで、「備忘録的に」という表現を見かけることがあります。僕も使います。

「○○について考えた内容を、備忘録的にまとめておこうと思います」とか。あるいは
「この前、おもしろいことがあったので、備忘録を兼ねて書いておきます」とか。

この「備忘録的に/備忘録として」という表現、昔からずっと(おもしろいなぁ。。)と思って来ました。でも、自分が感じるおもしろさが具体的になんなのか、どの辺がツボなのか、がよく分かりませんでした。

最近、(この辺がおもしろいのかな・・?)というのが分かった気がするので、書いてみます。

ーーー

例えばブログ記事の冒頭に
「○○について、備忘録的に書いておきます」
と書く人は、なぜ「○○について書きます」ではなく、そこに「備忘録的に」という一言を入れるのか。それは一体何を意味するのか。

<本当に「備忘録として」書いている?>
最初に考えられるのは、本当に備忘録として書いている、ということ。


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確かに、40歳を過ぎてますます感じることですが、自分が考えたり思ったりしたことを紙とか音声とか、何らかの形に残しておかないと、それは跡形もなく雲散霧消してしまい、外部に対してはもちろん、自分に対しても記録が何も残りません。
だから、それを「備忘録的に」書いておく、というのはよく分かります。

<だとしたら、それを発表する意味は?>
書き手が、本当に「書いておかないと忘れてしまう」から、「単なる備忘録として」その文章を書いたのだとしましょう。だとすると、次に浮かぶ疑問は、「でも、それを発表する必要はあるのか?」ということ。

備忘録は誰のためのものか。備忘録というのは、「人様が忘れない」ためのものではなく、「自分が忘れない」ようにするためのものです。では、自分の備忘録として書いたその内容を、わざわざ世間に発表する意味は何か?発表なんかせず、手元に、あるいは自分のPCの中に置いておいて「備忘」に役立てればいいのではないか、という気もしてくる。

<まあ確かに、発表を前提として書いた方が記憶に残る>
ブログを書いたり、Facebookに自分の意見とかを結構長めの投稿で書いたりする人であれば同意いただけると思いますが、
1.単に自分のための記録として何かを書くのと、
2.それを世に発表する、という前提で何かを書くのとでは、
全く違います。

つまり、
書く、と
書く→発表する
は全然違う、ということです。

発表を前提に書く方が当然「ちゃんと」書くことが求められ、その分しっかり考えなければいけない。その過程でその内容がしっかりと頭に刻み込まれ、備忘録としての効果が倍増する。これはよく分かります。

でも僕は、「備忘録的に書いておきます」と書く人は、多くのケースにおいて、実は備忘録として書いているわけではないのではないか、と思っています。では何のために書いているのか?そして何のために「備忘録的に」という一言を入れるのか。

<発表を前提にすることのデメリット>
ちょっと本題から外れますが、「発表を前提として書く」ことには、上記「しっかりと考えることを求められる」といったメリットとともに、デメリットもあると思います。(特に、その文章を書く目的がもし本当に自分の備忘録として、なのであれば。)

そのデメリットは、書いた内容が「本音でなくなる」リスクが高い、ということ。

発表を前提としないプライベートな文章であれば、自分の感じたありのままをそこに書き殴ることが出来ます。何を書いても恥ずかしくありません。見られないんだから。

でも、発表を前提とした瞬間、書き手は読み手を意識し始めます。そこに書かれた文章は、「自分が本当に書きたいこと」から逸れ、「自分のことを読み手にどう思ってほしいか。自分は読み手にどう思われたいか」みたいな邪念が混じり始めてきます(経験者談)。その結果仕上がった文章は、自分が心から感じたありのままではない可能性が高く、そうなると備忘録としての正確さは少し失われることになります。

<書くことと、書いて発表することの違い>
上記の通り、自分だけの備忘録として、あるいはあくまでも自分の思考の整理のために「発表を前提とせずに」ものを書く場合と、発表を前提としてものを書く場合とでは、大きな隔たりがある。この2つは全くの別物です。

「発表する」ということは、要するに「表現する」ということですよね。その文章を通して自分を表現する、ということです。何かを書いて、それを引き出しにしまっておくだけでも広義の「表現」に含まれるのかもしれませんが、ちょっと違う気もします。

<書き手が「備忘録的に」と入れる理由>
なぜ文章に「備忘録的に書いておきます」という文言を入れるのか。
なぜ「備忘録的に」という一言を入れるのか。

それを考えるためには、一書き手としての僕自身を振り返るのが近道です。
ブログの記事の冒頭に「備忘録的に書いておきます」と挿入する際、僕は何を考えているのか?
「忘れないため」ではないことは明らかです、僕の場合。ではなぜそんな文言を書くのか?

それは、その文章を発表する意味を見出せないから、のような気がします。

読み手からの「これって発表する必要ある?」というツッコミが聞こえてくるんです。
その文章を読んだ人が、「うん、分かったけど、これってわざわざ世に発表する必要ある?」と言って来たら?実際にはわざわざ言って来ないわけですが、仮にそう言って来たら、それにどう返答すればいいのか。

「備忘録として書きました」

と言えばいいのではないでしょうか。

もっと言うと、ここで書き手が思いを馳せている対象は読者の感想でもありますが、自分自身の感想でもあると思います。
読者はもちろんのこと、自分自身でも、その文章を発表する必要性を見出せないときがあるんです。ある、というか、結構多いんです。

ーーー

つまり、「備忘録的に」という表現は、書き手が自分自身に対し(この文章って発表する必要ある?)という疑問を感じた場合に挿入されるのではないか。

僕自身も、ブログ記事を書き、「投稿」ボタンをクリックする度に(これって発表する必要ある??)という声が頭の中でこだまします。
そして、多くの場合、(べ、別に発表する必要無いです・・・)という結論に至る。場合によっては「必要無い」どころか「発表しない方がいい」という結論に至ることも多いです。

「書く」のはいいんですよ。なんでも、好きなだけ書けばいい。
ただ、それを「発表する」となると全く別問題なんです。

<発表するのに、理由なんていらない>
もしそうだとしたら。
もし「備忘録的に」という一言が、「これって発表する必要ある?」という読者、および書き手自身からのツッコミに対して身を守るために挿入しているのだとしたら。

だとしたら言いたいのは、「何かを発表するのに、理由なんていらない」ということです。これは声を大にして言いたい。

オレが、この文章を世に発表する意味は何か? → 別にありません。
オレが、この絵を展覧会に出展することの意味は? → ナシ
オレがこの事業を立ち上げることで、世の中にどういうインパクトがあるだろうか・・・ → 特にありません。いや、あるかもしれないけど、それは後から結果的についてくることであって、起業する前からあれこれ心配する必要なんてありません。

文章を書くのも、絵を描くのも、事業を興すのも、全部表現です。
で、表現したいから表現する。それでいいじゃないですか。

しかも、自分が何かを発表することの意味を考えるプロセスはすごく「オレがオレが」していて、ちょっと自己中心的なのかな、という気がしてきます。自分自身について当てはめてみると、まさにそうだと思います。

「オレが○○を表現する意味は?」みたいに考えるプロセスって、一見謙虚なようで、実はその逆で、かなり傲慢なことのような気がします。「オレ」および「オレの表現」を過大評価しているからこそ、その意味について一生懸命考えるのではないでしょうか。実際には「オレ」にも「オレの表現」にも、そこまでの意味はありません、きっと。でもそれでいい。

お前が何かを表現する意味なんて別に無い。だから、表現したいならあれこれ考えず、とっとと表現すればいいんじゃない?
このブログも、そう自分に言い聞かせ続けて書いてきました。

だから、文章に「備忘録的に」なんて、実はあんま入れなくていい。
「発表したいから発表します」
でいいと思います。

<実は、みんなそんなこととっくにお見通し?>
今ふと思ったんですが、、、
「備忘録的に」という文言を挿入する書き手も、それを読む人も、↑の内容なんてとっくに考察済みで、そんなの分かった上で「備忘録的に」と挿入したりそれを読んだりしているのかもしれない、と思いました。

「備忘録的に」は、誰かにモノをあげる際、「つまらないものですが・・・」と言うのと一緒なのでしょうか?

「備忘録的に」の真の意味は、
「自分が書いた駄文など、本来発表するに値しませんが、でもちょっと発表してみたいので、あくまでも備忘録的に発表させていただきます」
ということなのか?もしかしたらそうなのかもしれませんね。「備忘録的に」をそういう意味で使っている書き手もいるのかもしれません。

だとしたら、とても便利な言葉というか、深いなあ、と思います。そして、それは傲慢などではなく、謙虚、ということですよね。

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以上、「備忘録的に」という表現に対し自分が感じるおもしろさについてつらつらと考えた結果を、備忘録的に書いておこうと思いました。読んでいただきありがとうございます。

by dantanno | 2017-10-20 16:09 | ことば | Comments(0)