横浜にお引越

あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。

いきなり昨年の話で恐縮なんですが、年末に引っ越しをしました。大田区馬込から、横浜に。そのてんまつ(course of events)を書いてみます。


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昨秋の、残暑がちょっと薄れ、涼しくなり始めたある日のこと。奥さん+さちと、横浜にドライブをしました。
目指していたエリアに着くと、そこにはすてきなカフェや本屋、潮風が吹く海沿いの公園、そして緑に囲まれた大型商業施設やペデストリアンデッキ(要するに歩道)などがあり、奥さんと僕はすっかり魅了(Mesmerize)されてしまいました。

「こんなとこ住んだら楽しいだろうねー」
「そうねー」

当時住んでいた家(@大田区馬込)に何か不満があったわけでは全然無いんです。実際、ちょうどその月に賃貸契約の更新をしたばかりで、馬込にさらに住み続ける気満々だったわけです。でも、もしあえて「気になる点を挙げろ」と言われていたら、挙げていたであろう点は「周りにお店が無いこと」だったかもしれません。ちょっとカフェでも行こうか、とか、今日は外食しようかとか、ちょっと家の近所でお買い物(スーパー、コンビニ以外)とか、そういうことが出来ない環境だったんです。

ついでに言うと、さちを連れて散歩出来るステキな公園がほしいなあ、という気持ちもあったかもしれません。そうだ、僕のジョギングが三日坊主で終わるのも、きっと僕の意思の弱さとかそういうことでは全然なく、ジョギングに適した環境の欠如、という外部要因のためでしょう。

それに対し、横浜のそのエリアは、これでもか!っていうぐらいお店やレストラン、カフェがあり、公園もあります。


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僕も奥さんも自営業者です。サラリーマン/OLではありません。
また、一口に「自営業者」と言ってもいろいろありますが我々の場合、例えば「お店をやる」とか、そういうタイプの自営業者ではありません。

何を言いたいかというと、平日の昼間に本屋に行き、そこで買った本を持ってカフェでゆっくり過ごし、読書に疲れたら17時ぐらいに明るいうちから生ビール、みたいなことが出来るわけです、やろうと思えば。その分、海外IRロードショー・シーズンは旅に出ずっぱりだったり、週末に翻訳をしたりするわけですが。

それと比べると僕のサラリーマン時代はかなり様相が違います。朝8時、まだお店が開いていない時間に家を出る。夕方、オフィス近くで残業飯を食べ、夜10時、もうとっくにお店が閉まっている時間に家に帰る毎日。こういう場合、もしステキな街に住んでいればそれをエンジョイ出来るのは主に土日となるわけですが、ステキな街だけに、土日は混むじゃないですか。そうした人混みがあまり好きではないタイプの人にとってはなかなか悩ましい。

でも通訳者であれば、どこで、どういう仕事をどの程度するか、は完全に自分次第です。なので、自分次第で、平日昼間にすいているカフェで過ごそうと思えば過ごせるなあ、と思ったんです。


「ひ、引っ越しちゃう??」

ステキな街に来ると僕がいつも口にする言葉を、ここでも口にしました。この時点ではまだ冗談でした。


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でもねー、賃貸契約を更新したばっかりだしねー、更新料払っちゃったしねー、引っ越し費用もかかるしねー、もう一回礼金払うのもねー、的な、それはそうだよね系の話を夫婦でしました。
それになんといっても、ある程度近い将来に引っ越し(横浜近辺への引っ越しとは別に)をする可能性が高いため、なおさらもったいない感が強かったんです。ほんの短かい期間(仮に1年程度としましょう)人生をエンジョイするために、わざわざ横浜に引っ越しをするのか、って。

それに対し、なんとか引っ越す方向に自分を説得したい、そんな僕のこじつけは以下の通り:

まず、馬込の家の更新料(ヘンな制度・・)については、経済学の「サンクコスト」の考え方を適用し、気にしなくていい、ということにしました。

残るは「無駄遣いじゃないか、贅沢じゃないか」という、決してそれほど裕福なわけではない我々家族にとって切実な問題だったわけですが、これについてもいろいろな考え方が出来ると思いました。必要に迫られていない引っ越しは、確かに無駄遣いといえば無駄遣いです。でも、人生における「1年」という期間をより充実させることが出来るのであれば、それはとてもいいお金の使い方ではないか、とも言える。逆に言うと、そのお金を節約するためだけに、1年もの間、ちょっと充実度を落とした生活(すなわち人生)を送るのであれば、じゃあ「お前の人生の価値はその程度なのか」という気がしてくるのも事実。

そんなこんなで、頭の中のこじつけ作業が続いていたある日、決定的な視点(?)に到達してしまいました。

もし今、馬込ではなく横浜に住んでいたとして、馬込に引っ越すか? → 引っ越しません。
なんで引っ越さないの? → 横浜に住みたいから。
だったら、たまたま今馬込に住んでいるからといって、横浜に引っ越すことを躊躇(Hesitate)するのはおかしいじゃないか。

なんか、この2段?3段?論法で、決意が固まってしまいました。
(もし横浜にいれば、他の場所への引っ越しはしたくないのに、馬込→横浜への引っ越しを躊躇する、というのはきっと何らかの心理学的なバイアスなんだろうと思います。最近、自分のそういうバイアスを分析するのがとても楽しい。)


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さて、引っ越してみて思ったんですが、実にいいですね、横浜って。

20代ぐらいの頃の僕は、「横浜に住んでます」って人がいると、心の中で(なんで横浜に住んでるんだろう・・・)と不思議に思っていました。いや、例えば「宇都宮」とか「静岡」とかに住んでるんだったらなんとなく分かるというか、納得感があったんですけど、でも「横浜」って、もうほぼ東京じゃないですか。横浜で生まれ育った人からすると「一緒にしないでくれ」って話なのかもしれませんが、シロウト的には横浜 ニアリーイコール 東京って、そう思ってました。で、ほぼ東京なのであれば、だったら東京に住めばいいじゃん、みたいに思ってたんです。

でも、実際に横浜に住んでみると、ここは違いますね、東京とは。そして、東京ももちろんいいけど、実に快適ですね、横浜は。前述の通りお店はすごく多くて便利だし、環境もいいし、交通アクセスもハンパありません。例えば大手町に行くのであれば、馬込の家よりも横浜の家からの方が早く着きます。東横線の相互接続もとても便利だし、YCATもいい感じです。

高くつきましたが、でも僕はこのように、気が向いたらいつでもフラッと引っ越しをする、そういう人生を生きていこうと思います。そうそう、引っ越しをする際の断捨離もとてもよかった。

金銭的には、どこかひとつところに家を買い、そのローンを返済していく方がトクなのは分かります。でも、人生というもっと広い見地から考えると、自分にはノマド的な非定住型の生き方のほうが合っていると感じました。近い内にまた引っ越すのが、今からもう楽しみです。


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by dantanno | 2016-01-03 23:53 | グローバルに生きる | Comments(0)

通訳・翻訳者 丹埜 段(たんの だん)のブログです。IRを中心にビジネス・ファイナンス系を専門としています。 通訳会社IRIS経営。http://iris-japan.jp


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