たんのだんのブログ

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エージェントは、通訳者の「デビュー」をどう支えるべきか

(最初の記事はこちら



散々な通訳者デビューから時が流れ、、、
今では「デビューしたい!」という通訳者の卵から相談を受ける側に回りました。



通訳者の「デビュー」、すなわち誕生に関連し、通訳エージェントに求められるのは以下のではないか、と考えています:



0. そもそも、「通訳者デビューしたい!」という気持ちを持ってもらい、それを後押しする力
1. 通訳者のセンス/ポテンシャルを見抜く眼力
2. 通訳力アップをお手伝いする力
3. 紹介できる通訳案件を見抜く眼力




以下、各項目について少し詳しく書き、ついでにIRISの自己採点を試みます。
興味がある項目だけ読んでいただければ。。




0. そもそも、「通訳者デビューしたい!」という気持ちを持ってもらい、それを後押しする力

「通訳者になりたい」とか、IRISの場合でいうと「IR通訳おもしろそう!」と思っていただかないと、話になりません。

で、通訳者が何を見て「通訳になりたい」とか「なりたくない」と思うか、を考えると、既存の通訳業界の有りようが当然重要になるでしょう。

だからこそ、我々通訳エージェントががんばって、通訳者にとってより魅力的な業界にしていくべきだと思います。

そのために出来ることはいろいろあって、例えばエージェント・通訳者間の諸々の仕組みをいじってみたりとか。
あとは、いわゆる広報活動とかもありますよね。
例えばこのブログだって、いろんな目的の内の一つが「IR通訳に興味を持ってもらうこと」だったりします。

自己採点: まだ50点



1. 通訳者のセンス/ポテンシャルを見抜く眼力

IRISは、開業当初は僕を除き7人のIRIS通訳者で発足しました。
その中には、IR通訳経験が無かった通訳者もいました。
仮にAさんとしましょう。

Aさんは、既に通訳者としては立派にデビュー済みでしたが、IR通訳の分野では「デビューしたいのになかなかデビュー出来ていない」という状態でした。



通訳者選考で、初めてAさんの通訳を聞いたとき、
(この人、結構IR通訳やってるな・・・)
と思いました。
それぐらい、上手だったんです。
で、「IR通訳、何年目ですか?」
と聞いたら、未経験だとおっしゃる。



考えてみると、未経験の人を(経験あるな・・・)と勘違いしているわけですから、実は見抜く眼力が無いとも言えますが、その後のAさんの活躍(後述)を見れば、ポテンシャルを見抜く眼力があった、とも言えると思います。やや言い訳がましいですが。



Aさんのように、本来デビューしていても全くおかしくないのになぜかまだデビュー出来ていない通訳者を見抜く力 (掘り出し物発掘型)。
あるいは、今はまだデビューさせられないものの、磨けば確実に光るセンスのある通訳者を見抜き、育成する力 (スター育成型)

両方の「眼力」が大事だと思います。

自己採点: 90点 
(自分が「上手だな・・・」と思う通訳者を見抜くだけだったら簡単なんです。
そうではなくて、投資家、IR担当者、そして証券会社のセールス担当者から見て「いいな・・・」という通訳者かどうか。
日々、そういった人たちの心に乗り移ってIR通訳をしているので、この点は相当自信があります。)



2. 通訳力アップをお手伝いする力

通訳エージェントが通訳者を「デビューさせる」のではありません。
エージェントに出来ることは、通訳者が自身でデビューするのをそっと後押しするだけです。
つまり、主役ではないものの、脇役・補佐役として、いろいろと出来ることがあるわけです。
通訳者からいただく料金には、そういった付加価値に対する対価も含まれています。

Aさんには、IRIS登録後、IR通訳のワークショップを通し、IR通訳に慣れていただきました。
また、実際に初案件(証券会社での電話会議)を担当いただく際は、担当する企業についてみっちりと事前打ち合わせをしたり、案件当日、証券会社1Fのロビーにて、電話のかけ方などをおさらい。

特にIRISの場合、チームみんなでみんなをバックアップする、という仕組みがあって、それが徐々に回りつつあるので、チームみんなからのサポートが得られます。



登録後ほどなくして、Aさんの実力に自信を深めた結果、難しめの会社の海外IRロードショーを紹介しました。
(後述しますが、ロードショーは難しそうで、実は初心者に優しい案件です。でも、指名を取るのは難しい。)

案件を紹介後、本番前にその会社が属する業界についてのワークショップを行いました。
また、これまでその会社を訪問し、通訳した結果得られたフィードバックをすべて共有し、送り出しました。

その1年後。。
同じ会社のIRロードショーで、Aさんにご指名が来ました!

「指名」には実にいろいろなものがあって、その重みに軽重がありますが、個人的には、ロードショーで取れた指名は本物だと思っています。1週間一緒に過ごし、何度も何度も通訳を聞かれた上で、1年後、忘れた頃にいただく指名の味はまさに格別です!

自己採点: まだ60点



3. 紹介できる通訳案件を見抜く眼力

カニは、脱皮した直後が一番弱い。

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まだ殻がやわらかいから。
デビューしたての通訳者みたいですね。

そんなデビューほやほやの通訳者を、、、

超質問が分かりにくい、半導体業界専門のマニアックな投資家(モスラ)  VS  超気難しくて、通訳に厳しいIR担当者がいる半導体会社(キングギドラ)

の電話会議に放り込んだら、一体どうなるでしょうか?一度やってみたい気もしますね。

しかも、その投資家が証券会社にとって超重要な顧客で、へそを曲げられたら年間何億円のコミッションがふっとぶ先だったら?



「通訳者に対するクレーム」は、「カニに対する石鯛(歯があるんです)の攻撃」と一緒で、致命傷になりかねない。

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デビューしたての通訳者をクレームから守るためには、紹介できる案件を見抜く眼力が求められます。



じゃあ、一体どんな案件なら紹介できるのか?



IR通訳の場合だと、例えばロードショーとか、エクイティ・カンファレンスの案件でしょうか。
上記の場合、同じ企業に数日間ついて、何度も同じような内容を通訳します。
初日の朝一は分かりませんが、通訳者にセンスさえすれば、すぐにポイントを掴み、2日目の朝にはいい感じになっているだろうと思います。

逆に紹介してはいけないのが、同じ投資家と一緒に5社を訪問するVisit案件。
予習が5社分必要になるし、訪問先企業のセクターが異なれば、その分通訳者がアップアップになる確率が高いです。



大物案件ではなく、単発の案件であれば、
とっても優しい、ゼネラリストの投資家 VS とってもとっても優しいIR担当者
のIRミーティングとかがいいですね。

"Can you give me a brief overview of your business?"
とか、
"What is your pricing strategy?"
とか、優しいお話に終始しそうです。

クライアントである証券会社にとっての、その投資家の「重要性」も大事なベンチマークです。

そういった案件を見抜く能力についても、IRISは結構自信あり。
証券会社の、まさにそういう仕事をする部署から産まれた会社なので。

自己採点: 85点



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以上、つらつらと書いてきましたが、やはりデビューの主役はあくまでも通訳者であり、エージェントはそれを手助けする助産婦にすぎません。

一緒に力を合わせ、
「通訳の仕事をしたい。でも、そのためには通訳の仕事の経験が必要」
の無限ループを打ち破りましょう!

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by dantanno | 2013-09-29 09:01 | IRIS | Comments(0)