通訳者の評価基準を変更しました

これまで、IRISでは通訳者の評価基準として、「指名」を使ってきました。

具体的には、
指名数
指名率(指名数/担当案件数)
リピート客率(リピート客数/担当案件数)
です。

クライアントからどれくらい「選ばれて」いるかは、プロとして大事な指標だと思うから。
そして、通訳者が長期的にHappyになっていくためには、「エージェントから選ばれている」だけでは不十分で、「クライアントから選ばれる」必要があると思うから。



「指名獲得を目指してください」
ということではありません。

通訳者力(通訳者としての力)を上げるべく、何か具体的に努力する

通訳者力が上がる

会議参加者が喜ぶ

(上記の結果として)指名が入る可能性が高まる


という考え方です。



(結果として)指名が多く入る通訳者は、会議参加者(≓クライアント)を喜ばせている

逆に、、、

指名があまり/全然入らないということは、一体何を意味するのか、一度考えていただきたい
という思いでやっています。



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そんなある日。
正確には昨日。

クライアントから、IRIS通訳者に対するお褒めのメールが来ました。
その通訳者の人柄と、通訳パフォーマンス両方に対する賛辞が書いてありました。



このように、IRIS通訳者に対するお褒めのことば、感謝の言葉をクライアントからいただくことはときどきあります。
そういうときは、それをIRIS全員で共有し、その通訳者をたたえ合います。



でも、そういう「おことば」を、通訳者評価には活用してきませんでした。
あくまでも「指名」だけを見てきました。



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なぜ「指名」だけにこだわってきたかというと、
お褒めのことばや感謝のことばはカネにならないから。



僕の通訳者としてのキャリアで、何度も経験があります。

3日間、海外投資家と一緒に都内を周り、とても気に入ってもらいました。
最終日、投資家が成田エクスプレスに乗る際、
「お前はグレートだ。ベスト・インタープリターだ。名刺もらってたっけ?念のためもう1枚ちょうだい。次来日する際、ぜひまたお前にお願いしたいから!」
と言い残し、二度と音沙汰無し(笑)。



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こういうのって、通訳者としていくらでも言い訳できるけど、つまるところ、僕の通訳者力が欠けているから実際の指名につながらないんだと思う。

上記褒め言葉をもらうだけだったら、85点の通訳でOK。
でも、実際に指名につなげるためには、90点、95点じゃないといけない。

上記投資家も、あとちょっと何かがより良ければ、、、僕に通訳者力がもう少しあれば、、、
口先だけでなく、その後実際に指名を入れている可能性が高いと思う。
投資家はバカじゃないから。出来れば「いい通訳者」を使いたいに決まってるから。

まあ、そんなわけで「褒め言葉」や「お礼」は、通訳者の評価基準に含めずに来ました。



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そんな中、前述のお褒めのメールが届きました。

メールが来てから1日考えました。



クライアントは 「喜んでいるか、喜んでいないか」、どっちだ。
間違いなく喜んでいます。
だったら、なぜそれを通訳者評価に活用しないのか。

我々通訳者は「サービス業」に従事していて、クライアントを喜ばせるのが仕事。
で、このメールは「クライアントが喜んだ証拠」として使えないのか?
もちろん使える!




ということで、今後は
「指名」
ではなく、
「クライアントの喜び」

を評価指標にすることにしました。

「満足度」 Satisfaction
ではなく、
「喜び」  Happiness

を見ようと思います。
Satisfactionなんて、当たり前すぎて見る意味が無いから。
そして、ただの満足よりも一段上の感動が無いと、Happinessにはつながらないと思うから。



具体的には、通訳者がクライアントを喜ばせた回数/率を見ていこうと思います。

「指名」は、クライアントを喜ばせないと入らないので、もちろんそれも含める。
それに加え、クライアントからのポジティブ・フィードバックも大事に見ていきます。



クライアントをたくさん喜ばせ、感動させられる通訳者。
それこそが本当のプロだと思うし、超かっこいいと思うし、僕がリスペクトしたいのはそういう通訳者だなあ、としみじみ思います。

IRISは、CH (Client Happiness)をたくさん生み出す通訳者集団になりたいです。
by dantanno | 2013-08-10 09:27 | IRIS | Comments(0)