通訳コーディネーターは、なぜコロコロ辞めるのか: その2
2012年 10月 07日
宿泊業(ホテル・旅館)では、宿側にとって合理的な部屋の割り振り方は
(どうせあいてるなら) なるべくいい部屋を
という思想に基づきます。
では、通訳エージェントにおける、通訳者アサイン時の思想はどうか。
宿泊業の場合と大きく異なります。
乱暴な言い方をしてしまうと、
(スケジュールが空いている中で) なるべくウデが悪い通訳者をアサインしよう
と考えるのが最も「合理的」とも言えるんです。
そんなバカな・・・
と思われるかもしれません。
少し補足させてください。
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まず、通訳者の「売り値」、つまり、クライアントがエージェントに支払う料金ですが、
基本的にどの通訳者も同じ値段です。
大手の場合、通訳者をランク分けし、各ランク毎に料金を変えているエージェントが多いですが、
各ランクに属する通訳者は大勢います。
で、同ランクであれば、売り値は均一です。
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一方、「仕入れ値」はどうか。ここがミソです。
通訳エージェントにとっての「仕入れ値」はすなわち、レート(エージェントが通訳者に支払う通訳報酬)を指します。
レート(仕入れ値)は、通訳者毎に異なります。
通常はエージェント側が、その通訳者のウデ/経験・実績/指名数等に応じてレートを決めています。
IRISもそう。
ウチの場合、通常のエージェントと以下の2点において考え方が異なります。
1. IRISが通訳者にお金を支払うのではなく、通訳者がIRISにお金を払っている
2. レートは、通訳者が自由に決める
ですが、大まかな仕組みは同じで、
通訳者のウデ/経験・実績/指名数等に応じ、通訳者毎にレートが異なる、という点は通常のエージェントとまったく同様です。
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さて。
実際にクライアントから依頼が来た場合を想定し、通訳エージェント内で何が起きるかをシミュレーションしてみましょう。
クライアントから依頼が来ました。
通訳コーディネーターとして、まず直感的・本能的(笑)に思うのは、
コ 「なるべくウデのいい通訳者をアサインしたい」
ということ。
客商売として、クライアントのことを考えると、当然そうなりますよね。
問題は、
ウデのいい通訳者ほど、仕入れ値が高い(汗)ということ。
宿泊業では、部屋毎のコストの違いは主に固定費の違いで、変動費の違いはほとんどありませんでしたが、
通訳業では、通訳者毎のコストの違いは基本的に全て変動費なんです。
そして、クライアントは昨今のデフレの風潮に合わせ、
ク 「とにかく安くしてくれ」
の一点張り(笑)。
それを受け、売り値(エージェントがクライアントにチャージする料金)は下がってきています。
悩んだ末、通訳コーディネーターは・・・
コ 「なるべくレート(仕入れ値)が安い通訳者をアサインしよう」
と考えます。
「レートが安い」からといって、必ずしも
「ウデが悪い」とは限りません。
でも、大きな傾向としては、
ウデ/実績・経験がある通訳者ほどレートが高い
ウデ/実績・経験が無い通訳者ほどレートが安い
というのは、間違いなくあります。
無きゃおかしいでしょ?
その結果、、、
通訳コーディネーターの
コ 「なるべくレートが安い通訳者をアサインしよう」
は、
コ 「なるべくウデが悪い通訳者をアサインしよう」
とほぼ同義になってしまうんです。
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クライアントのことを考え、なるべくいい通訳者をアサインしたい!と思うその一方で、
なるべくウデが悪い通訳者をアサインしなきゃ・・・と思わざるを得ないこの葛藤。
通訳コーディネーターは、マジメ・マトモであればあるほど、この良心の呵責にやられてしまうのではないか。
という推察です。
<さらに続く>
そうですか、マイナー言語なのに料金が安いんですか。。。逆かな、と思っていました。
コーディネーターと通訳者の関係は、本来通訳者の方が上であるべきだと思います。業界のいびつな構造(特に、通訳・翻訳者がクライアントから全然指名を取れないこと)のために、一見逆に見えてしまっているだけだと思います。この辺は、いずれ変えていきます。お互いがんばりましょう!
マチコ先生、懐かしいです(笑)。