IR通訳(者)にごめんなさい

僕の、通訳者としての専門分野はIR通訳

そんな僕が先日、IR通訳以外の分野の通訳をしました。
政治系(同時通訳)。

結果は、、、
負け。
納得のいく通訳Performanceが出来ませんでした。



あれじゃクレーム入るかなあ、どうだろうなあ。
って、そういう問題じゃないですよね。

クレームが入ったら「すいません」
クレームが入らなかったら、舌をペロリと出して知らん顔、って話ではない。
それを言い出したら、「ご迷惑をお掛けしたのであれば、お詫びします」っていう、
TVでよく聞く、意味不明な詫びと同じになっちゃう。

クレームとか以前に、僕自身が恥ずかしくなるような出来でした。



「専門外の分野だったら、ヘタでもいいのか」
んなはずは無いですね。



「専門外の案件を引き受けていいのか」

耳鼻科の医者は、心臓の手術をしちゃいけない。
パイロットは、新幹線を運転しちゃいけない。
じゃあ、IR通訳者は政治系の通訳を引き受けてもいいのか。
ダメでしょうね、ほんとは。
それでも、あれこれとずるい思惑があり、やることにしました。



引き受けた以上、ある程度の準備はしました。
でも、所詮付け焼き刃。
ちゃんとやろうと思ったら、数年の勉強・経験が必要です。



いいんです。
十分なパフォーマンスが出来ないであろう事は、引き受けた時点で分かっていたことです。
そんなのを引き受けるのは、プロとしてどうなのか、って疑問もひっくるめて引き受けたんだから。

それはいいんだとしたら、何が悔しかったのか。
以下にまとめてみました。



1.出来るのに・・・

全く歯が立たなかったわけではない。
あと一歩、いや、あと二三歩。四歩
ちゃんと出来てる自分が見えるだけに、余計くやしい。

2.自分の小さな殻に閉じこもり、お山の大将をやっていたことを強制的に認めさせられた感


なんか長いタイトルですね。

IR通訳という専門分野の中で経験を積みまくり、DBを構築して、
「絶対にクレームが入らない。指名はたまに入る」
とうそぶいていました。

IRISの経営についても、ちょっとそう。
自分がほぼ完璧に理解できるストーリーを構築し、
それに沿ってあれこれ楽しく考え、その戦略に沿って実行し、その先に何が待ち受けているのかを楽しみにしています。

小さな枠の中でゴチャゴチャやってるのは自覚してるからいいんだけど、今回は、
首根っこをつかまれ、その心地いい枠の外に連れ出され、
自分の無能さ+小ささを強制的に自覚させられた感じ。ドMとしてはたまりません。

3.IR通訳(者)にごめんなさい


その同通で組んだパートナー(Aさんと命名)に、本番中、ちょっと世話になっちゃいました。
初めて、同通で組んだ相手に「完敗」感を感じました。

「完敗」って感じたのは、Aさんがすごいからではない。
Aさんはもちろん上手だったんだけど、
Aさんがうまいから負けたんじゃなく、自分がヘタだから負けました。

Aさんがどう思ったか知らないけど、
今頃「フン、やっぱIRメインの通訳者はダメだな」と思われててもしょうがない内容でした。



僕が起業しようと決めた分野である、IR通訳。
来年から、一緒に楽しく戦う予定のIR通訳者たち。
その全てに対して、ごめんなさい、と感じた一日でした。

IR通訳って、なんとなく格下というか、最上級ではなく見られがち。(その割には、上手に出来る人が少ないんですが。)
自分が忌み嫌うその風潮に、ほんの少し拍車をかけてしまった感じ。ああ、くやしい。

4.で?


もちろん、転んで倒れっぱなしじゃありません。

決めたのは、
こういう政治系とか、経済系、社会系等、幅広く、ちゃんと出来るようになろう
ということ。
そういうのもちゃんと出来る上で、堂々と「IR通訳専門」でいこう、
ということ。

イメージは、徐行運転するフェラーリ。

(こう書くと「ふーん、じゃあやっぱりIR通訳は「徐行運転」で、たいしたことないんですね」と言われちゃうかもしれないけど、そうじゃありません。ものの例えです。
この辺の、どの通訳のタイプが偉いのか、つまり、サミット・国連の通訳と、IR通訳と、観光ガイド/展示会でのアテンド通訳と、どれが偉くて、どれが偉くないのか、については、別途書こうと思います。
オチだけ先に言っちゃうと、「天は通訳の上に通訳を作らず、通訳の下に通訳を作らず」という感じです。)



ヘンな話だけど、
そもそも、今回の話を引き受けた大きな理由の一つが、
「こういう悔しさを感じられるかも」ということ。
果たして、狙い通りになっちゃいました。


今日は、IR通訳(者)にごめんなさい。
でも、明日からまた立ち上がります!!!
Commented by peko at 2011-11-29 18:36 x
本当にためになります。IR通訳者の中での葛藤がこんなに赤裸裸に聞けるとは・・・。"IR通訳者"と同等に呼ぶにはおこがましいような駆け出し(以前)なのですが。ちょこちょこ覗かせていただきます。
Commented by dantanno at 2011-11-30 19:33
pekoさん、コメントありがとうございます。この日はほんっと反省しました。でも、例えば今日なんかは、かなりグダグダな通訳だったわりに、「まあいいや」的な開き直りをしています。いい加減なモンです。これからもぜひ遊びにいらしてください。ダン
by dantanno | 2011-11-28 23:22 | IR通訳 | Comments(2)